本日の日経朝刊のトップを「パートに残業手当」の文字が飾った。これが対応するネット上の記事。この法案が来年の通常国会に提出される予定とのことだが、パートを多く活用している中小企業は人事がらみの案件だけに、早めに手を打つ必要があろう。以下、報道に従って簡単な解説をしておきたい。
【残業手当の現状】
現在の労働基準法の下では、法定労働時間を超えて労働させた場合には25%~50%の割増賃金を支払わなければならないとしている。法定労働時間とは労働基準法で週40時間と決められている。これは、パートだろうと正社員だろうと同じで、両者とも週40時間を超えて働いたら、割増賃金がもらえる。
【改正後の残業手当】
改正案では、法定労働時間ではなく、所定労働時間を超えて労働させたら割増賃金を払わねばならない。所定労働時間とは、各企業の就業規則で定められた時間から休憩時間を差し引いた労働時間のことである。各企業で定めている時間であるから、企業毎でバラツキがあるのだが、多くの企業では正社員の所定労働時間は法定労働時間と同じ40時間である一方、パート社員の所定労働時間は週30時間未満に抑えられていることが多い。したがって、この改正により、ほとんどの正社員は影響を被らないが、パート社員については、今まで割増賃金を支給されなかった分についても、割増賃金を支給される可能性がでてくる。
【なぜ正社員とパートの所定労働時間は違っていたのか?】
さきほど、正社員の所定労働時間は40時間でパート社員は30時間未満のケースが多いと述べたが、その原因は厚生年金法にある。厚生年金法では、その対象にすべき人(被保険者)について、以下のように定めている。
「短時間労働者(パート社員)については、所定労働時間が一般の人に比べて4分の3以上の場合であって、常用的使用関係が認められる場合に、原則として被保険者となる。」
つまり、正社員の所定労働時間は40時間だから、パートの所定労働時間を30時間以上にすると、「4分の3以上」にひっかかり、パートも厚生年金の被保険者としなければならなくなってしまい、そのためのコスト負担が企業側に生じてしまうのだ。
【この法案改正への単純な対処法】
この法案への単純な対処としては、パートの所定労働時間を法定労働時間の40時間まで拡大することが考えられる。ただし、その場合厚生年金保険料のコスト負担増があるため、割増賃金率と厚生年金保険料の増加をシミュレーションして、最適な法定労働時間を割り出す作業を行うべきであろう。
【この法案改正への本質的な対処法】
上記案は以下に現金支出を抑えるかしか考えていない。そもそも、この法案改正の背景には、パートの労働が正社員に比して、正当に評価されていないとの認識がある。日経朝刊記事の後半部分には、「正社員とパート・派遣社員の処遇格差を縮めることも企業に求める」との記述もある。この改正をきっかけに、パートの処遇全般について、抜本的に見直しをかけるのが本筋であろう。
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