本日の日経1面の次のような見出しをご記憶の方も多いと思う。
基礎年金 15年で1割目減り 月額6万円割る
現在審議中の年金制度改革法が成立したとの前提で、厚生労働省が試算を行ったところ、上記のようなケースも見られたという。そして、この年金受給額が減少する原因がマクロ経済スライドなのだと書いてある。恐らく大半の方が、「なんだかよくわからないが将来の年金の受給額が減りそう」という感覚であると思われるので、以下に若干解説を加えたい。
【現在の国民年金の年金額の決定の仕組み】
そもそも、大前提として、新聞に「基礎年金」と書いてあれば、それは「国民年金」のことで、これは年金保険料さえ払っていれば、誰でももらえる。サラリーマンであっても、厚生年金保険料をきちんと納めていれば、老後は老齢国民年金を老齢厚生年金に加えてもらうことができる。
で、この国民年金だが、保険料を何年間支払ったかによってもらえる金額が異なってくるのだが、40年間きちんと納めた場合の満額は、現在年間79万7千円(月額6万6千円)である。
実は、この金額は毎年見直されている。どのような観点から見直されているかといえば、物価だ。物価が上昇しても年金が目減りしてしまわないように、総務省が作成する全国消費者物価指数を参照して、消費者物価指数が上がればそれに応じて年金額を上げる。逆もまたしかりで、消費者物価指数が下がれば年金額は下げられてしまう。
【新法案のもとでの国民年金額決定の仕組み】
さて、私がいうまでもなく、年金財政は火の車である。現在の年金額のレベルを維持しようとすると、現役世代の保険料が高騰してしまう。それでは若い人々があまりにも可哀想なので、老人のみなさんも痛みをわかちあって下さいという趣旨のもと作られた仕組が、マクロ経済スライドなのである。
具体的には、毎年年金額を見直すのは今までと同じなのだが、前年度の年金額に以下で計算された率を乗じることで、年金額を見直すのである。
物価変化率 - スライド調整率
この後の「スライド調整率」が年金生活者のみなさんに痛みをわかちあっていただくための調整率であると考えてよい。では、このスライド調整率とはなにでどのように計算されるのかについては難しくなるため説明を避けるが、厚生労働省によれば、2025年までは平均的に0.9%と見込まれている。イメージとしては、年金額が毎年0.9%近く、じわりじわりと減っていくと考えてよいだろう。このじわりじわり年金額が減るマクロ経済スライドの仕組みにより、物価の動きによっては、冒頭に挙げたような「15年で1割目減りしてしまう」ケースや「月額が実質的に6万円を割ってしまう」ケースがありうるということを、厚生労働省が試算してみせたということだ。
【今回のコラム執筆にあたって参考にしたネット資料】
みずほリサーチのPDF文書・・・年金改正の全体像をつかむのによい文書である。
自治労連のHP内の文書・・・当コラムではふれなかったが、スライド改定率と物価増減率の関係に関する細かい論点がわかりやすくまとまっている。
ALL ABOUT JAPAN内の文書・・・マクロ経済スライドに関するわかりやすい説明がある。