吉野家が不採算店20店の深夜営業を休止するとの報道です。既に既存店売上高は4月から3割減のペースが続いており、この決断を迅速と呼べるかどうかは評価は分かれるでしょうが、お客様の利便性等も考慮に入れると時期的にも適切と思います。売上が回復しないときには、コスト減でなんとかしのぐというのはビジネスの鉄則ですが、吉野家は深夜営業を休止することにより、パートタイマーの人件費と光熱費を削減することが可能となります。言うまでもなく、パートタイマーの人件費削減の方が金額的にもインパクトが大きいのですが、ではパートタイマーの人件費とはどのように管理すればよいのでしょうか?
新聞紙面には「原則として赤字になっている時間帯に限り営業を休止」と書いてあります。ということは、吉野家は月次決算や日次決算を超えて、時間帯別の損益管理を行っていることになります。これは最新鋭のシステムがないとできないのではないかというと、そんなこともありません。小売業であればPOSレジはあり、したがって時間帯別の売上・客数・客単価は存在しますし、原価テーブルをあわせれば、時間帯別の粗利も簡単に算出できます。それにあとは人件費を合わせれば、最低限必要な時間帯別損益は算出できます。(実際、勤怠管理が行えるPOSレジも多くあります。)
一方、小売業でパートタイマーを減らすと覚悟せねばならないのは、顧客満足度の低下です。(レジの打てる店員が少ないと、レジ待ちで我々はいらいらしたりします。)では、コスト削減から享受できるメリットと顧客満足度の低下からくるデメリットをどのように折り合いをつけていけばよいのでしょうか?これを管理するための経営指標として、人時生産性というものがあります。
人時生産性(英語ではSPH = Sales Per Hour)とは売上を店舗で働く人の総労働時間数で割ることにより算出されます。たとえば、ある1時間に9万円の売上があり、その1時間に3人の店員で対応していたとすれば、人時生産性は1時間あたり3万円となります。人時生産性の数値が高い程効率がよく、低いほど、売上に比べて過剰な人員を有していることになります。
吉野家のようなフレキシブル経営を目指す場合、まず最初にすべきことは、この人時生産性をPOSの売上と勤怠表から作成し、記録を作ることです。そして、どの程度の人時生産性の値が自社のビジネスの平均的な値であるのかを、肌にたたきこみます。そして、それにより得られた数値の感覚を頼りに、人が多すぎると思われる時間帯の人員を減らし、逆に店員が少なく、売り逃しの機会損失が生じていると考えられる時間帯に、追加人員を投入する、その繰り返しをすることが、売上の変動にも耐えうる強靭な企業を作り上げていくのです。
フレキシブル経営は、巨額の投資で完成した最新鋭のシステムなどによってではなく、実はこのような当たり前な思考の愚直な実践の繰り返しにより実現されるのです。