インフレ参照値・・・最近しばしば小耳にはさむ言葉です。何を意味するのでしょうか?
【インフレ参照値とは】
インフレ参照値とは中央銀行が望ましい物価上昇率を示すことをいいます。例えば日銀が1%くらいの物価上昇率が望ましいと言えば、その1%がインフレ参照値です。「そんなことはわかっている」という声が聞こえます。では今なぜインフレ参照値が、我々庶民の耳に届くまで話題になっているのでしょうか?それには現在の経済情勢をざっと見ておく必要があります。
【デフレはそろそろ終わりらしい】
現在の経済情勢をざっと見ると、デフレはそろそろ終わりそうだ、と言えるでしょう。消費者物価指数の動向を見るとだんだんプラスに転じている方向性が見えてきます。
では、なぜデフレが終わりそうになったかといえば、実は日本銀行が一役かっています。日銀は「デフレが終わるまで量的金融緩和を続ける。」と約束し、その約束通りに量的金融緩和ベースにした金融政策を実行してきました。
ここで量的金融緩和とは、日銀がいろいろな方法でお金を市場に放出することをいいます。では、なぜ日銀がお金を市場に放出するとデフレがおさまってしまうのでしょうか?それは、例えばキャベツがあまりにも豊作だと値段が暴落しますよね。それと同じような感覚で、お金もあまりにも量が多すぎるとお金自体の価値もさがってしまうのです。お金の価値が下がるということは、逆から見れば、ものの価値があがるということです。すなわち物価があがる。だから、量的金融緩和はデフレを収めてくれるのです。
【デフレが終わると長期金利が上がる?】
さきほど、デフレは収束にむかいつつあるといいましたが、すると日銀の約束は「デフレが終わるまで量的金融緩和を続ける」ことだったのですから、裏返せば、デフレが終わって物価が上がりはじめたら、もう量的金融緩和は行わないといえます。つまり、簡単にいえば、金融引き締めに転じるということです。どうやって日銀は金融引き締めを行うかといえば、市場に出回っているお金の量を減らしていったり、さらには公定歩合を引き上げたりして、金融引き締めを行います。・・・ということは、金利が上がるわけで、その辺を先読みして、長期金利が最近になって急上昇しはじめたのです。
【長期金利が急上昇は好ましくないと日銀は考えている】
日銀は、長期金利が急上昇することを、あまりおもしろく思っていません。なぜならば、景気の回復を妨げてしまう恐れがあるからです。現在国債の利回りが上昇しているのですが、銀行から企業への貸出金利も国債の利回りをベースに決められます。国債の利回り上昇につられて企業への貸出し金利が上昇すれば、利払いの負担が増えて苦しくなる企業がでてきたり、そこまでいかなくとも、はでな投資を行おうとしていた企業の意欲を妨げ、そのような過程を経て景気回復のシナリオに暗雲が漂いはじめてしまいます。では、どうしたら長期金利の急上昇を避けることができるのでしょうか?
【長期金利の急上昇を避ける方法がインフレ参照値】
長期金利の急上昇を抑える働きをしてくれると考えられているのが、このインフレ参照値なのです。では、どのようなメカニズムでインフレ参照値が長期金利の急上昇を抑えるのか?それにはフィッシャー効果という下の式を理解する必要があります。
名目金利 = 実質金利 + 期待インフレ率
名目金利とは、まあ、世間で口にされる、あるいは、新聞で書かれている金利のことです。日経新聞で「長期金利が1.8%」と書かれていればそれが名目金利です。上の式の意味は、物価が上がっていくと期待される中では、名目金利もそれにつれて上昇するということを意味しています。
ですから、今長期金利が急上昇しているというのは、実はこの期待インフレ率が急上昇しているということなのです。
ここで、強大なパワーをもつ日銀が「私が望ましいと思う期待インフレ率は1%くらいなんです。」といってくれたらどうでしょう?「日銀さんがそういうんだったら・・・」ということで、人々のインフレ期待も1%程度におさまり、したがって、長期金利が急上昇をするということはなくなるのです。つまり、このようなメカニズムでインフレ参照値は長期金利の急上昇を抑えてくれるわけなのです。