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2004年07月06日

中小企業の知的財産の活用

UFJ信託銀行と大田区産業振興協会が月内にも提携し、中小企業が持つ知的財産の活用を支援する事業が始動するとの日経報道です。知的財産信託に関しては、弊社2004年5月19日のレビュー記事において、日本生命とみずほ信託銀行の事例を紹介し、同記事へのアクセス数等の面から、みなさまの関心の高い分野であることが改めて確認できました。本日ご紹介するのは、中小企業の活用事例であり、中小企業の資金調達の道を広げるという意味で、非常に興味深いものです。

【仕組の概要】
大田区は東大阪市と並んで優れた技術をもつ中小企業が集積していることで知られる地域です。今回の仕組みのもとでは、大田区の中小企業が持つ特許権の信託をUFJ信託が一括して請け負い、特許権侵害を防ぐとともに、資金調達にも知的財産を活用する、となっています。
この中で最も注目すべきは、信託銀行が不正利用の監視や特許利用契約の締結を通して、特許権侵害の防止に一役買ってくれる点でしょう。一般的に、下請け的な立場に甘んじている中小企業は、販売顧客である大企業への交渉力を持たず、本来受け取れるべき正当な対価を受けていないケースが往々にしてあります。この仕組みのように信託銀行を介することで、中小企業側が正当な対価を受け取ることが可能となれば、意義は大きいでしょう。
また、契約締結等の事務作業の負担から中小企業が解放される点も、意義が大きいといえるでしょう。一般的な大企業であれば、きっちりとした法務部門が存在し、事務作業を信託銀行が請け負ってくれることによるメリットはあまりないと考えられますが、中小企業では法務専任のスタッフを抱えることはコスト的に難しく、信託銀行側に投げることができるメリットは大きいでしょう。

【最大の難問~知的財産の評価額をどうすか?~】
上記の仕組において、中小企業は特許権等を信託することにより、まとまったお金を調達することが可能となるのですが、最大の難問はその特許権をいくらで評価するのかという点です。これは私の推測ですが、信託銀行各社もまだ確たる方法論を現段階では確立しておらず、現在評価方法を急ピッチで作成しているはずです。公認会計士協会からは、6月15日に「知的財産評価を巡る課題と展望について(中間報告)」と題されるレポートが発表され、信託銀行各社がこれを参考にすることは大いに考えられます。(残念ながら同文書は有料ダウンロードのため、リンクできません。7月のJICPAジャーナルに掲載されるそうなので、ご興味のある方はご参照下さい。)
したがって、知的財産の評価方法を具体的にご紹介することはできないのですが、ここで一般的な財産評価の考え方をご紹介しておきます。
株式であれ、債券であれ、不動産であれ、どのような資産であっても、その評価額は一般的に「その資産から生み出される将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引く」ことにより算出されます。
債券がもっともわかりやすいでしょう。利払いと償還の期日にいくら入ってくるかは決まっているのですから、あとはこれを適切な割引率で現在価値に割り引くだけです。債券ディーラーはこうして計算された理論価格をもとに債券の売買を行っています。不動産であれば将来得られる賃料の予測額を、株式であれば将来得られる配当の予測額を、適切な割引率で割り引きます。ここで、債券と比較すると、債券の利子や元本に比べて、賃料や配当は将来得られるキャッシュフローというのが、より不確実になるという点に注意する必要があります。不動産には空室リスクが、株式には利益の変動リスクがあるからで、したがってリスクを反映させた債券の割引率よりは高い割引率を設定すべきです。
この考えを例えば特許権に応用すると、やはり特許権も将来得られるキャッシュフローの予測額を割り引くことにより評価額が計算されますが、特許権においては、技術の陳腐化のリスク等を勘案して、割引率を設定することになるのでしょう。

【改正信託業法の成立時期について】
現行の法制度のもとでは、上記の仕組みは実現できません。というのも、現行の信託業法では、信託の引受ができる財産の種類を①金銭②有価証券③金銭債権④動産⑤土地及びその定着物⑥地上権及び土地の賃借権の6つに限定されており、特許権等が含まれていないからです。信託業法の改正は、年金改革関連法案の混乱を受け今国会では成立できず、臨時国会での成立、来春の施行を目指すとの報道があり、具体的に動きがあるのは、来春以降となる見通しです。

Posted by Ken Kodama at 2004年07月06日 11:09
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