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2004年07月31日

銀行三つ巴の泥仕合の深層心理

UFJと三菱東京グループの経営統合に、三井住友グループが待ったをかけたという報道です。合併がアナウンスされると、このような泥仕合が展開されることは、実は珍しい話ではありません。私のプロフィールをご覧いただいた方は、ご記憶にあるかもしれませんが、私の在籍していたフランスの金融機関BNPパリバも同じような泥仕合を経て、統合にいたったいきさつがあります。まずその背景をお話したいと思います。
私が入社したのは、フランスの金融機関の日本法人、「パリバ証券」の東京支店でした。パリバは歴史の古い、ホールセール専業の名門金融機関でした。世界的に金融再編の進む中、2000年に、同じフランスの金融機関であるソシエテ・ジェネラルとの合併プランが公にされました。ソシエテ・ジェネラルはホールセールのみならずリテール網もフランス国内に有しています。両者が友好的に統合し、「SGパリバ」が誕生しようとしていた矢先、パリ国立銀行(略称BNP)が、今と同じように待ったをかけたのです。
パリ国立銀行の提案は、ソシエテ・ジェネラルとパリバの両者の株式をTOBによって取得し、一気に三行統合を目指すという大胆なものでした。BNPもフランス国内にリテール網を有しており、特にSGとBNPの統合により、メリットが大きいとされていたのですが、ふたを開けてみると、統合が実現したのは、BNPとパリバというシナジー効果の低い両者の統合だったわけです。
このように、大きな案件の「売り物」が出ると、「買い手」が複数出現し、競争が展開されるということは珍しくありません。またその激しい競争の結果、必ずしも経済的に見てプラスとなる結果に落ち着くわけでもありません。どうして、合併話が持ち上がると、激しい争奪戦が繰り広げられ、最後には不毛な結果がもたらせるのでしょうか?
小口の投資案件は別として、報道のようなビッグディールについては、ごく少数の経営陣で意思決定を行うこととなります。問題の重要性が他の案件に比べて格段に高いにも関わらず、意思決定に関わる人はわずか数人に限定されてしまうと、いかなる名経営者とはいえ、その意思決定には人間的な弱さがにじみ出てしまうものです。また、そうした経営者の人間的な弱さをくいものにする「インベストメント・バンカー」なるM&Aの仕掛け人の存在という問題もあります。経営者が少人数で極限の状態で意思決定をせざるを得ないところに、M&Aの難しさがあるといってよいでしょう。
なお、「どろどろしたM&A」という点では、先日のライブドアの近鉄買収報道が記憶に新しいところです。あれは、どう解すればよいのでしょう?堀江社長は何を狙って、手をあげたのでしょう?
確かに、ライブドアには近鉄買収に十分なキャッシュはあります。ただ、第一に、球団経営のノウハウを有する人材などライブドアにはいません。第二に、買収が仮に実現したとしても、期待できるシナジーが乏しいです。第三に、ナベツネ氏ら球団関係重鎮に阻まれることは目に見えています。
こうして考えると、百戦錬磨の堀江社長が本当に買収が実現できると想定していたとは考えにくく、買収に名乗りをあげることにより、ネットコミュニティーから脱皮して、オフライン社会へ向けての大々的なPR活動だったと解するのが妥当でしょう。
今後は三行の話は、どう進展するのでしょうか?買収劇は経済ニュースを見る感覚ではなく、「橋田ドラマ」を見ているのだと割り切ってしまえば、新聞報道がより楽しめると思います。

Posted by Ken Kodama at 2004年07月31日 14:09
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