執筆者のプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif

2004年09月14日

インフレ対応型国債と「国」のリスク管理

財務省は今年度、金利や物価が上昇すると利子や元本が増える「インフレ対応型」国債の発行を前年度比6割増やす方針であるとの報道です。インフレ対応型の国債とは、当サイトでは既に紹介してきた、個人向け国債物価連動国債のことです。こうした国債を政府が発行せざるを得ないのは、将来の金利上昇に対する懸念があります。利率が固定した従来型の国債では、将来の金利上昇時に価値が目減りしてしまうことが目に見えていて、誰も買わないからです。
さて、私はファイナンシャル・プランナーとして、個人の方が住宅ローンを組むときは、できるだけ、固定金利で組むように助言しています。なぜなら、変動金利では将来金利が急上昇してしまった場合、毎月の返済額も急上昇して、家計が破綻しかねないからです。同じ理由から、変動金利型の借入をしている企業に対しても、金利スワップのような技術を使って、金利を固定化するよう勧めます。国が個人向け国債や物価連動国債を発行するということは、変動金利型で借入をしているということで、国庫は極めて重大な金利リスクにさらされているといえるでしょう。さて、国はこのような金利リスクに対して、どう備えているのでしょうか?
国庫の細かい事情は知りませんが、国が金利スワップのようなデリバティブを活用して、変動金利を固定化するということは考えにくいです。なぜなら、国の債務といった大規模な債務をヘッジしようとすると、金利スワップ等のデリバティブの市場の需給は崩れ、結果的に割高な資金調達になってしまうからです。
将来金利が上昇するということは、そのときは景気が回復していると考えてよいでしょう。つまり、政府は金利上昇のリスクは景気回復による法人税・所得税の増加で、減殺されると考えているのでしょう。しかし、本当に「金利上昇=景気回復」なのでしょうか?
経済学には「スタグフレーション」という用語があります。野村證券のサイトの用語解説を引用させていただくと、スタグフレーションとは「景気が停滞しているにもかかわらず、インフレーションが続くこと」です。こうした用語があるということは、実際にこうした事態が過去にもあったことを意味し、オイルショック後、物価上昇と景気後退(税収減)が同時に発生したことがありました。当時、各国政府は変動金利建ての債務をほとんど抱えていなかったと思われますが、この先十数年後にスタグフレーションが発生した場合、どうするのでしょうか?大幅増税するか、また国債を大量発行して問題を先送りするかしかないでしょう。
スタグフレーションを懸念して、個人向け国債の発行を中止せよ、などというつもりは毛頭ありません。しかし、先進的な一般企業では、想定しうるあらゆるリスクを洗い出して、そのような事態が発生したときの対抗策を考える、リスク管理を行いつつあります。政府も、変動金利建て債務で資金調達する以上、こうした想定し得るリスクに対抗するシナリオを事前に立てておくべきではないでしょうか?

Posted by Ken Kodama at 2004年09月14日 09:57
Comments
Post a comment









Remember personal info?