原油高を受け、石油元売り各社の2005年3月期の収益が急拡大する見通しだとの報道です。特に、新日本石油においては、連結経常利益が従来予想を310億円上回り、前期の三倍の1700億円前後に膨らむとのことです。
日経新聞の紙面では、こうした増益要因の背景にあるものとして、棚卸資産の評価法の1つである総平均法を挙げています。これはどの会計の基本的な書物には書かれていることであり、一般的に物価上昇期にはFIFOを用いると利益は増加し、LIFOを用いると利益はあまり変わらず、総平均法ではその中間となり、会計の教科書の理論を生きたビジネスの中に見出せる好例といえるでしょう。
しかし、総平均法だけでは、新日石の1,390億円の増益を説明することはできません。事実、日経紙面でも、在庫評価による増益要因は300億円としています。あとの1,000億円近い増益はどのように説明できるのでしょうか?
答えとしては、石油元売各社は原油の上昇によるコスト増を下流に全て転嫁していると考えることができます。原油価格がどれほど上昇しようと、「コストプラス+α%」で下流への販売価格を設定しているため、仕入れ値が上昇すればそれだけ利益も増えるというわけです。
簡単に数値で検証してみたいと思います。新日石の昨年度の連結損益計算書を、かなり数字を丸めたものは以下の通りです。
売上高 4兆2,800億円
売上原価 3兆9,300億円(約92%)
売上総利益 3,500億円
販管費 3,000億円
経常利益 500億円(営業外損益をゼロとする)
ここでいくつかの前提をおきます。
● 売上の「数量」については昨年度と変わらない。
● 原油の価格は2003年度平均から2004年度平均は40%上昇している。
● 石油元売から下流への販売価格設定に際し、昨年度と同じマージンを確保するものとする。
● 販管費は固定費とする。
①まず、原油価格が売上高より40%上昇しているため、今年の売上原価の予想は「3兆9,300億円 × 1.4」より、5兆5,000億円となります。
②昨年度と同じマージンを確保するための今年の売上高は、「5兆5,000億円 ÷ 92%」より、5兆9,800億円となります。
③これらをもとに今年の新日石の業績予測を下記に作成してみます。
売上高 5兆9,800億円
売上原価 5兆5,000億円(約92%)
売上総利益 4,800億円
販管費 3,000億円
経常利益 1,800億円(営業外損益をゼロとする)
これは、新聞で発表されていた1,700億円とかなり近い数字といえるでしょう。私が分析に要した時間はデータ収集も含めて30分くらいしかかかっていません。このように売り手が圧倒的に強く販売価格を支配できる業界においては、業績予測は比較的簡単に行うことができます。みなさんも是非、頭の体操としてみてトライして下さい。
Posted by Ken Kodama at 2004年10月27日 11:04