本日の日経新聞5ページに『GDP統計 景気判断の波乱要因に』なる、一見、難解そうであまり面白くなさそうなコラムがありました。
コラムの粗筋はこんな感じです。
『現在のGDPデフレーターの算出方法によれば、実勢よりかなり低い物価下落率がはじきだされていて、問題である。したがって、算出方法を「連鎖方式」に見直し、実勢に近づけるべきだが、そうすると実質GDPが下振れし、景況感が変わるリスクがある。』
なかなかマニアックな議論ですが、「経済学」が受験科目に入っている資格試験(例えば私が担当する中小企業診断士など)受験者の方には、「ラスパイレス」「パーシェ」の特徴を、より実戦的に復習するよい機会かもしれません。以下、「ラスパイレス」「パーシェ」そして、新聞の「連鎖方式」をからめて、整理してみたいと思います。
【CPI(消費者物価指数)の計算方法】
まず、一番みなさんになじみのある物価指数である、消費者物価指数(CPI)です。この数字をもとに、我々は「物価が上がった下がった」と論議をします。この指数を計算するには、我々が日常生活で使いそうな品物をピックアップして、それらの価格を加重平均して、物価指数を計算するわけです。
ここで問題となるのは、ウェイトづけする品物の数量を、いつの時点を基準とするか、という点です。CPIの算出においては、ある基準年を定め、その数量でウェイトづけを行っており、その基準年は現在2000年になっています。こうした、ある昔の基準年の数量でウェイトづけして物価指数を計算する方法をラスパイレス方式と呼びます。
実は、このラスパイレス方式で物価指数を計算すると、実勢より高めに物価が計算されてしまう、という上方バイアスが生じてしまいます。なぜなら、我々はあるものが安くなれば、その安くなったものの消費を増やしますが、ラスパイレス方式では数量を基準年に固定しているため、こうした「安いものの消費を増やす」という数量構成の変化をとらえきれないためです。
【GDPデフレーターの計算方法】
一方で、基準年ではなく比較時点での数量でウェイトづけして計算するのがGDPデフレーターで、この方法をパーシェ方式と呼びます。
ただ、一点注意せねばならないのが、こちらにおいても「基準年」という概念がなくなってしまうものではない、ということです。実際、GDPデフレーターの基準年は、現在1995年に設定されています。
では、この基準年を使ってなにをするかというと、品質調整ということを行います。品質調整とはなにかというと、例えばパソコンなどを、基準年(つまり1995年)と比較年との間で性能を比較してみるわけです。そして、性能が4倍になっていれば①価格は4分の1になったとみなすと同時に②消費数量は4倍になったみなす、ということを行います。
当然、我々はパソコンの性能が4倍になったからといって、パソコンを4倍買うことはなく、今度は先ほどのCPIとは逆に、「安いパソコンの消費量を過大にみなしてしまう」という問題から、GDPデフレーターは下方バイアスがある、といわれています。
【GDPデフレーターの見直し ~連鎖方式~】
現在の方法では、品質調整という仕組みによりGDPデフレーターが下振れしてしまう、ということを確認しましたが、その下振れを大きくしてしまう原因の1つに、設定されている基準年が古いという問題があります。1995年と比べ続けていれば、品質調整による下振れはどんどん大きくなってしまいます。
解決策として考えられているのが連鎖方式なるもので、この基準年をこまめに見直していくことで、下振れを少なくしましょうというのが狙いです。
【当エントリーの参考文献】
日銀論文 経済点描 『GDPデフレーターの下落率はなぜ大きいのか?』
Posted by Ken Kodama at 2004年11月09日 11:19