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2004年11月16日

ソニー銀行赤字の理由

異業種から新規参入した銀行4行の2004年9月中間決算が15日に出揃い、ソニー銀行を除く3行は黒字であったとの報道です。赤字の理由として、本日の日経新聞朝刊には以下のような一文がありました。

『住宅ローンの金利リスクを抑えるために実施したヘッジ取引で評価損が膨らんだ。』(引用終)

この一文は、まずヘッジ取引なるものを知らない方には全く意味をなさないでしょうし、また、ヘッジ取引に関して漠然とした知識しかもたない方にとっては、更に不可解なものにうつるはずです。こうした2パターンの方を想定して、上記の一文の背景を解説してみたいと思います。

【ヘッジ取引とは】
ヘッジ取引とは、私なりの定義をさせていただくと、将来の不確定要素を排除するための取引です。
よく使われるのが外国為替取引です。例えば、アメリカに商品を輸出した決済代金として3ヶ月後に100万ドル受け取ることが確定しているとします。そのような場合、3ヶ月後の為替レートの水準など分からないわけですから、そうした不確定要素を排除したいわけです。いくつかの手法はありますが、ポピュラーなのは、現時点でドルの為替先物を売却しておくことです。こうしておくことで、為替レートを3ヶ月後ではなく、今の時点のレートで固定させることが可能となります。そして、この際に用いられた「ドル為替先物の売却」が、この場合におけるヘッジ取引ということになります。
ソニー銀行の場合、主力の住宅ローンの大部分は変動金利建てとなっています。このままでは将来受け取る金利が確定していないため、不確定要素を排除するためにヘッジ取引が行われます。ソニーのIR資料を見ると、住宅ローンのヘッジ取引として金利スワップが使用されていることが明記されています。金利スワップとは、変動金利と固定金利を交換する取引のことで、ソニーは住宅ローンから変動金利を受け取るわけですから、変動金利を支払い固定金利を受け取る金利スワップを組むことにより、将来の不確定要素を排除することが可能となります。

【なぜヘッジ取引から赤字が出てしまうのか?】
ここまでは、ヘッジ取引とはなにかの説明でしたが、ヘッジ取引について漠然とした知識しかもたない方は、なぜソニー銀行はヘッジ取引から赤字を垂れ流しているのか、疑問であるはずです。先ほど書いた外国為替の設例の取引からは、評価損益は生じません。なぜ、ヘッジ取引から赤字が出ているのでしょうか?
可能性は二つあります。第一はヘッジがうまくいっていないという可能性です。金利スワップでヘッジ取引を行うこと自体、高度な専門的知識を要し、そうした資質にかける方が担当されていた場合、ヘッジ取引が適切に行われなくなる可能性があります。また、仮に専門的知識があっても、内部統制が機能していない場合には、金利スワップで投機的な取引を行い、損失を出す可能性すらありえます。
第二の赤字の説明の理由として考えられるのは、極めて会計的なものです。通常ヘッジ取引を行った場合、ヘッジされる原取引とヘッジ取引の損益を合算すると、ゼロに近くなります。しかし、会計原則の仕組上、ローン債権は時価評価しませんが、ヘッジ取引である金利スワップ取引は時価評価することになっており、片側しか時価評価していないために、大きなマイナスを計上したりプラスを計上したり、ということがあり得ます
「ソニーブランド」を信奉するならば、第一の理由のようなお粗末なものは考えられず、したがって、赤字の理由は第二の極めて会計的なもの、となるのでしょうが、名門の住友商事ですら、かつてデリバティブで巨額の損失を計上したくらいですから、易々とソニーブランドを信奉するわけにもいきません。

【住宅ローン販売金融機関に望まれる開示情報】
ソニー銀行の場合、住宅ローンが全体のビジネスに占める割合が非常に高く、こうした問題が早くから顕在化してしまいましたが、他の金融機関も大なり小なり同様な問題を抱えているはずで、それが我々の眼に触れないだけです。
公庫の廃止を受けて、今後民間金融機関の住宅ローンの比重はますます高まるでしょうから、適切な情報開示が求められるところです。
私は、住宅ローン債権の時価情報を、注記情報として開示するのが望ましいと考えています。金融機関にそれほど手間もかからないはずです。仮に現時点で、内部管理用としてローン債権を時価評価していないとすれば、それは大きな問題です。
また、民間金融機関の住宅ローンの多くは変動金利建てのローンを主力商品としていますが、今後金利上昇を受けてローン破産者が続出することが大いに考えられます。そうした場合、金融機関は貸倒のリスクのみならず、ヘッジ取引だけ残存してヘッジ元取引が消失してしまうことによるアンマッチが生じてしまうことも、将来的に大いに考えられます。そしてアンマッチ分のヘッジポジションをクローズする際に大きな損失を被ることも十分考えられます。預金者として、また、投資家として、銀行に必要十分な情報開示を望みたいところです。

Posted by Ken Kodama at 2004年11月16日 13:35
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