執筆者のプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif

2004年11月24日

住友信託の知的財産信託

本日の日経新聞のトップを、知的財産関連の報道が飾りました。映画やアニメなどのコンテンツ(情報の内容)を対象とした国内初の知的財産信託が登場するとの報道です。これまで、当サイトでは、知的財産関連の報道を注視し、以下のエントリーを書いてきました。

知的財産信託とは?

中小企業の知的財産の活用

中小企業向け融資の3つの新たな方向性

当サイトが知的財産信託に着目する理由は①土地等の担保を持たない中小企業にとって新たな資金調達源となりうること、また②私が受験指導をしている中小企業診断士試験の要である財務会計と経営法務の交錯する論点であり、学んだ知識を生きたビジネスの場に応用するのに格好である、と考えるからです。

【なぜビデオ化権が対象となったのか】
今回の知財信託の対象となったのは、「ビデオ化権」又は「ビデオグラム化権」と呼ばれるもので、この権利を知的財産の中でどこに位置づけられるのか確認しておきたいと思います。
知的財産は大きくわけると①工業所有権と②それ以外に分類することができます。工業所有権としては、特許権・実用新案権・意匠権・商標権があり、工業所有権以外の代表格が文化的な創造物を保護する著作権です。
著作権はさらに、著作物の財産的価値を保護する「財産権としての著作権」と著作者の人格的な利益を保護する「著作者人格権」に分かれます。著作者人格権の方は、他人に譲ることのできない性格のもので、ビデオグラム化権は分類としては「財産権としての著作権」の支分権と位置づけられます。
例えば映画に関していえば、映画館で上映する権利は上映権、そしてDVDやビデオにする権利はビデオグラム権と、「財産権としての著作権」は支分権に分かれているわけです。住友信託は知的財産信託第一号をはじめるにあたって、なぜ上映権に手を染めず、ビデオグラム化権に着手したかといえば、それはビデオグラム化権から生ずる将来のキャッシュフローの予測が比較的容易であるからに他なりません。映画があたるかあたらないかを予測するのはかなり難しいですが、ビデオが売れるか売れないかは、上映のデータにある程度比例すると予測され、知的財産信託の最大の難問である、キャッシュフローの予測をある程度クリアできるのです。
今回対象となったアーティストハウス社の映像子会社アーティストフィルム社の事業理念にはその点が明記されているため、以下に引用します。

『株)アーティストフィルムは、国内外の映画を中心にビデオグラム化権(DVDやビデオとして出版する権利)の取得を行っています。
リスクの高い映画配給を原則行わず、長期的収益を見込めるマーケティングコストが限定的なビデオグラムに事業を特化しており、一定の収益が確実で当社のブランド作りに有効な作品には、プロデュース、出資の参加もしております。』(引用終)

今後もしばらくの間は、著作権がらみの知的財産信託の主流は、こうした二次利用に関わるものが主流になるのではないかと、思われます。

【今後の信託銀行の動向】
知的財産信託の信託財産を工業所有権に定めるか、著作権に定めるかによって、まったく異なる人材が必要となります。工業所有権をターゲットにするのであれば、技術に対する洞察をもつ人材を集めねばならず、またウォッチすべきマーケットは産業財市場となります。逆に著作権がらみであればエンターテインメント業界に見解を有し、消費財市場のマーケティングの観点を欠かすことはできません。大田区と組むUFJ信託は、最初は恐らく前者に特化していくのでしょう。住友信託は「今後は特許権などの知財信託にも力を入れる。」とのことですが、「知財信託」ということで一まとめにして、同じ人材を投入しているようであれば、適正なプライシングを提供できるのかどうかという点において、一抹の不安を感じざるを得ません。

Posted by Ken Kodama at 2004年11月24日 11:00
Comments