本日の日経新聞1面を、中小企業関連のニュースが飾りました。経済産業省と財務省は中小企業向けの公的信用保証を縮小する方針であるとの報道です。この報道はこれからの中小企業金融を考える上で重要であると同時に、信用補完制度は中小企業診断士試験の頻出事項でもあります。まず、圧縮の対象となる「中小企業向けの公的信用保証」とは何であるのか、概要を見ておくこととします。
【信用補完制度の概要】
信用補完制度とは、担保を十分にもたない中小企業が民間の金融機関から融資を受けやすくするために、中小企業の信用力を補完する制度のことです。
もう少し具体的に言うと、融資を受けたいが担保が十分にない中小企業は、信用保証協会という団体に保証料を支払うことにより、万一の場合の借金の返済を肩代わりしてもらいます。
信用保証協会は、こちらの一覧表からわかるように、現在全国で51あります。全国で51もあるわけですから、それぞれの財政基盤がこうした保証を行うに足るほど磐石であるわけではありません。そこで、各信用保証協会は信用保険を中小企業金融公庫との間で締結します。(信用保険業務は平成16年7月に中小企業総合事業団から中小企業金融公庫に引き継がれました)こうすることにより、中小企業金融公庫が、最終的な肩代わりをして、万一のことがあれば、信用保証協会に保険金を支払ってあげるわけです。
では、中小企業金融公庫自体が財政的にどうしようもなくなるとどうするのかといえば、税金が投入されます。今朝の日経新聞によれば2003年度の中小企業金融公庫の信用保険事業は4,000億円の損失を計上したとのことで、これだけの税金が投入されているのです。これまでの話を簡単に図示すると以下のようになります。
中小企業金融公庫 ← 政府
<税金>
保険金 ↓ ↑ 保険料
信用保証協会 → 銀行
<代位弁済>
保証 ↓ ↑ 保証料
中小企業
【モラルハザード】
一見、中小企業に優しい制度に見える信用補完制度ですが、この制度により引き起こされる最大の問題がモラルハザードと呼ばれるものです。モラルハザードとは危険を回避する仕組みを作ってやることで、かえって保険事故の発生可能性を増やしてしまうことをいいます。
上図を見ていただければわかるように、融資を行った銀行は、融資先が倒産してもお金がいくつかの機関を迂回して国から入ってくるわけですから、痛くも痒くもありません。その結果が4,000億円の税金投入となってしまったのです。
このモラルハザードを抑制するという意味においては、今回報道されているように保証範囲を圧縮することは好ましいことといえるでしょう。そして、タイミング的にも、銀行の不良債権の削減に目処がつき、信託業法の改正により可能となる「知的財産信託」等の融資の代替となる枠組みが提供されることが間近である今は、この報道の与える衝撃を少しでも和らげるという意味でよかったのかもしれません。
【中小企業のとるべき道】
中小企業の融資は、担保を絶対に必要とする時代から確実に変化してきています。新たな融資の方向性とは、当サイトにて紹介した、以下の2つのエントリーが参考になるかと思われます。
中小企業経営者の方は、伝統的な融資手法にとらわれず、積極的に新しいタイプの融資の動向に目を配っていく必要があるといえるでしょう。
Posted by Ken Kodama at 2004年12月01日 16:17