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2004年12月06日

サルでもわかる「移転価格税制」とホンダのケース・スタディ

本日の日経1面に、自民党税制調査会が国際取引への課税強化の方針を固めたとの報道がありました。2つの柱があり、①海外投資家の日本国内での取引に対するものと、②国内企業に対するもので、後者に対しては移転価格税制の対象となる海外グループ会社の範囲を拡大しようというものです。本日はこの移転価格税制について考えてみたいと思います。

【移転価格とはなにか】
法人税率の高い国、低い国があるのは、皆様ご存知の通りです。海外で積極的に事業を展開している国際的な企業グループであれば、税率の高い国での利益をできるだけ少なくして、代わりに税率の低い国の利益を多くして、全体での支払税額を少なくしようとする誘惑にかられます。しかし、こうした行動は税務当局から租税回避と見られ、こうした租税回避を抑制するのが移転価格税制なのです。
移転価格とは多国籍企業のグループ会社間で、国境を超えて行われる取引の価格のことです。グループ会社間の取引なのですから、親会社の意のままに決定することができ、通常取引されている価格より高かろうが低かろうが、子会社は従わざるを得ません。しかし、このような市場とかけはなれた移転価格を野放しにしておくと、租税回避が横行してしまうため、企業グループ間の取引価格すなわち移転価格にしばりをかけようというのが移転価格税制の趣旨なのです。
基本的には企業グループ間の取引であっても、独立した企業間の取引価格の水準で価格を設定せねばならず、こうした独立した企業間で設定されるであろう取引価格をアームズ・レンクス・プライス(arm's length price)と呼ぶのです。

【租税回避と認定されないために】
私の少ない経験からすると、実際のところ、租税回避などという大それた意図は少しもないのに、知らず知らずの内に、アームズ・レンクス・プライスとかけ離れた取引価格を企業グループ間で設定しまっていることが、結構あるものです。租税回避と認定されてしまわないためには、どうやって企業グループ間の取引価格を決定すればよいのでしょうか?
まず、行うべきはファンクション・アナリシス(function analysis)と呼ばれるものです。企業グループ内のそれぞれの独立した法人が、グループ内においてどのような機能を担っているか、そしてどの法人がビジネスリスクを負うべきなのか、といったことを分析し明らかにしていきます。
次に行うべきなのが、上述のファンクション・アナリシスに基づいた価格設定で、価格設定のメソドロジー(方法論)には、2つの代表的な方法があります。すなわち①マーケット・ドリブン法②コスト・プラス法の2つです。マーケット・ドリブン法は、市場で販売できる価格を基準にして、各法人のとるべきマージンを控除して移転価格を算出する方法で、コスト・プラス法は製造原価に適正なマージンを上乗せして移転価格を算出する方法です。
ここで大切なのは、税務当局に追及されたときに、グループ企業間の移転価格は合理的な考えと数値データに基づいて決定されたものだということを説明する、バックアップの資料を整備しておくということです。こうした資料がなければ、税務当局への反論のしようがありません。

【例題 ホンダの1000cc級戦略車の移転価格を考える】
本日の日経1面には、移転価格を考える上で、格好の例題があります。ホンダは排気量1000cc級の「コンパクトカー」と呼ばれるクラスで、2008年にも発売する世界戦略車の開発に着手したとの報道がそれで、日経紙面には「開発」は日本で行い、「生産」はタイで行い、「販売」は欧州で行うとの図が描かれています。これは、非常に粗いレベルのファンクション・アナリシスと考えてよいでしょう。では、このファンクション・アナリシスに基づけば、タイから欧州に販売するときの移転価格は①マーケット・ドリブン法によるべきか、②コスト・プラス法によるべきかどちらでしょう?
色々な考え方があるのかもしれませんが、私はタイから欧州に販売するときの移転価格はコスト・プラスによるべきであると考えます。その根拠に、マーケット・ドリブンにした場合を考えて下さい。マーケット・ドリブンで移転価格を設定すれば、販売台数が計画に満たないときに、タイの生産工場に赤字が出てしまうことが考えられます。これはすなわち、タイの生産工場に欧州での販売リスクを負わせているからに他ならず、このスキームを考える以上、タイの工場には生産に対する適正な利潤が落ちるようにすべきで、コスト・プラスを採用すべきでしょう。
今年の中小企業白書の主要テーマの一つが中小企業のグローバリゼーションであり、中小企業とて移転価格税制に対して無策であるわけにはいきません。かといって、あまり追加的なコストをかけるわけにもいきませんから、仮に税務当局に追及されても理論的に説明し得る、バックアップの資料を整備しておくことを、まずはおすすめ致します。

Posted by Ken Kodama at 2004年12月06日 11:36
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