昨日の日亜化学と中村氏の和解の報道とタイミングをほぼ同じくして、日立が発明報奨制度を刷新したとの報道が本日の日経一面を飾りました。
まず、この一連の流れに思うところですが、中村氏らの、お世話になった会社を訴える動きに眉をしかめる方も少なくないですが、これらの人々がこうした動きに出なければ、特許法の改正も日立の制度改革の動きも恐らくなかったか、タイミングが遅れていたことでしょう。技術者の報奨が適正とはいいがたかったことが主因で、優秀な理系学生がインセンティブの厚い金融業界に流れてしまい、そのことによる社会的な損失は計り知れないと思います。企業内の技術者の正当な権利というものに、社会全体の目を向けさせたという点で、中村氏らの動きは評価されるべきだと思います。
次に日立の新制度の概要ですが、「(1)発明報奨の裁定委員会の設置(2)発明者への報奨内容の具体的な開示(3)報奨上位者の社内公表(引用)」の3つを柱としているとありますが、これは特許庁の以下のガイドラインに忠実に従ったものとなっています。
技術力をコアコンピタンスとする企業にとっては避けることのできない文書ですので、関連企業の方は上記リンクよりご覧いただきたいと思います。
また、「相当な対価」の算定の問題ですが、日立の場合のベースは新聞で見る限り「売上高」が主ファクターで、日亜の和解額も、下記の記述を見る限り、売上高が算定のベースとなっています。
(引用始)
『今回の和解では日亜の青色LED関連売上高の五割が中村氏が関与した発明によるものとし、他者にライセンス供与したと仮定した場合に得られるロイヤリティー収入を算定。「売上の3.5~5%」と計算した』
(引用終)
金額算定のベースに売上高をもってくるのは、わかりやすさという点ではダントツですが、企業価値の評価で使われるDCF法、リアル・オプション法等が知的財産の評価という分野にも進出してきていることも事実で、それらの手法を用いた方が合理的である、というケースも当然ありえます。
そうした評価の手法の複雑さ等も考慮に入れると、発明報奨の制度改革は、研究開発部門、知的財産を管轄する法務部門、人事・労務部門に加えて、財務部門の担当者も加えたプロジェクト・チームを編成した上で、取り組むことが望ましいかと思われます。