標題の報道の概要は、皆様ご存知のことかと思います。以下の二面から、私なりにこの問題を考えてみました。
【村上氏側の論理】
村上氏の行動は私から見れば至極単純で、「割安と考えられる株を大量に買い込んで高く売る」という投資の王道を歩んでいるに他なりません。ここで「割安」の判断の根拠ですが、日経新聞にも書かれていたとおり、『ニッポン放送が保有するフジテレビ株の時価総額だけでニッポン放送の時価総額を上回るといういびつな状態(引用)』という、分かりやすいものですが、これを一般化すると、村上氏のアプローチはB/S(資産と負債)に着目して理論株価を算定していた、ということができるでしょう。理論株価の算定にあたってもう一つの代表的なアプローチは、将来のフローに着目する方法で、DCF法がその代表といえるでしょう。(DCF法等の詳細については、私の発行するメールマガジンをご参照下さい。)将来のフローに着目した理論株価の方が、B/Sに着目した理論株価に比べて高くなることが一般的で、村上氏の投資手法は、その点だけを取り上げれば「控え目」な理論株価に基づいたものといえるでしょう。同じような例としては、ソフトバンクが数年前下落を続けていたときに、保有するヤフー株に基づいた理論株価が議論されていたことを思い出します。
ただ、一つ、我々零細個人投資家にマネができないのは、村上氏の投資ファンドは、筆頭株主となって(おそらく)経営陣に圧力をかけて、価値の顕在化を迫るという手法を取るという点です。個人投資家にはこのようなマネはできませんから、割安と思われる株を購入した場合でも、たとえ割安と判断した根拠が正しかろうと、割安のままで終わってしまうという可能性もあります。
【フジテレビの株価について考える】
さて、TOB実施後のフジテレビ株について考えてみましょう。フジテレビ株については、2つの側面から非常にリスクが高くなる、すなわち利益のブレが大きくなるということが確実にいえます。2つの側面の一つは財務構造で、TOBの資金を借入とCBで賄うために他人資本が増加するのと同時に、ニッポン放送の株取得は実質的に自社株買いでもあるため自己資本が減少し、財務構造が不安定になります。もう一点目は、ニッポン放送の収益とフジテレビの収益は共に広告収入であるという点で、好不況の波から受けるインパクトがこれまで以上に大きくなります。
このようにリスクの高まりは明確に認識することができるのですが、肝心のリターンをどうやって高めていくのか、という点が現段階では全く見えてきません。そもそも、ハイリターンの青写真もなく、自らハイリスクに転じてしまうというのもおかしな話ですが、後づけにせよ、リスクに見合ったリターンのプランを提示できないようでは、株主に対する責任を果たしているとはいえないでしょう。