本日の日経新聞3ページでは、最近のデジタル家電を取り巻く厳しい経営環境に対する各社の取り組みに対する、なかなか興味深い分析がなされています。製品の価格下落に耐えて業績を維持した企業は、以下の3つの戦略をとっていたというのが日経新聞の分析です。
①収益の分散化
②部品の内製
③汎用製品ではなく特化製品にシフト
いずれも興味深いポイントではありますが、本日は二番目の内製化にしぼって考えてみたいと思います。
部品を内製するのではなく外注することによるメリットというのも、当然ながらあります。ここ10年くらいのことだと思いますが、コア・コンピタンスという流行の経営用語に後押しされ、企業は自社が強みを持つ分野に経営資源を集中し、それ以外の不得意な分野は外注し、外に出してしまおうという大きな流れがありました。自社のコア・コンピタンスを絞り込み、それ以外を全てアウトソースした究極の企業形態として注目を浴びたのがバーチャル・コーポレーションという概念です。
反面、外部に出してしまうと、その企業によるコントロールが弱まってしまうというデメリットが存在します。デジタル家電製品の価格下落というのは、企業にとってみれば外部環境の問題で、企業のコントロールの及ばない領域です。しかし、販売量は増加しているのですから、ビジネスチャンスは大いにあるわけです。そうした場合、企業のコントロールの及ぶ内部環境での経営努力により、外部環境から受けるダメージを最小限に食いとどめることが可能です。
この環境で増益を達成したシャープは液晶パネルという中核部品を内製しているため、価格下落を受けて、いち早くコスト削減に取り組んだため、苦境の中増益を達成できたと考えられます。対して、液晶パネルを外注しているソニーにできることは、外注先への価格交渉に限られ、それがソニーの原価に反映されるまでには、内製化している場合に比べ、著しく多くの時間を要してしまいます。
ソニーの井原副社長が「ユーザーの目線に立っていたか、何を守り何を捨てるかで過去に戦略的誤りがあった」と発言したとの報道がありましたが、「何を守り何を捨てる」という部分には、部品の内製化という問題も意識していると思われます。本日の日立がプラズマパネル生産会社を完全子会社するという動きも、部品の内製化に関わる軌道修正と考えられます。今まで全社の戦略レベルでの判断なしにアウトソーシングを推進してきた企業も、この流れを受けて軌道修正を推進する動きが今後増加するのではないかと、私は予測します。
部品を外注するという決断をした場合でも、中核技術を手放さないでメーカーの作成した設計図で外注先に製造させる貸与図方式と呼ばれる手法と、外注先に全面的に設計までも行わせる承認図方式と二種類の方法があり、日経ビジネス人文庫の『トヨタを知るということ』には、トヨタが両方式をうまく使い分けているさまが描かれています。中小企業診断士試験を受験される方は、2つの用語だけでも頭の片隅にとどめておくと、よいかもしれません。