ドコモが第三世代の携帯端末を値下げするとの報道が、本日の新聞紙面を大きく割いて取り上げられていました。本日はこれに関連して、キャプティブ製品の価格設定というマーケティング上の概念をご紹介したいと思います。
『コトラーのマーケティング入門』に紹介されている事例を取り上げれば、ポラロイド社はカメラ本体に低い価格設定をした上で、フィルムの販売で高い利益を獲得しています。また、ジレット社はカミソリ本体の価格を抑えて、替え刃の価格を高くすることにより利益を得ています。これらの例の場合、フィルム、替え刃にあたるのがキャプティブ製品と呼ばれ、主製品とキャプティブ製品の全体での利益確保を目指し、二段階の価格設定を行うことを、キャプティブ製品の価格設定と呼びます。主製品の価格を抑えるのは、当然新規顧客を呼び込むためであり、また、トータルの利益はキャプティブ製品により補完されるため、こうした価格設定が可能となります。
日経ビジネス文庫の『キャノン式』においては、カメラメーカーとしてスタートしたキャノンが、「我々はフィルムメーカーをもうけさせているだけではないか」との思いから、トナーというキャプティブ製品を抱える複写機製造に進出した経緯が冒頭に描かれています。
携帯電話においても機種変更の場合よりも新規購入の方が価格が安くなるのは、やはり広義の意味でキャプティブ製品である「通話料」が控えているからです。ただし、携帯電話ビジネスの場合、携帯端末の製造を担う企業と通話料を受け取る企業が異なるところに、深刻な問題があります。
携帯電話各社は通話料の確保のために、熾烈な携帯端末の価格競争を繰り広げていますが、その皺寄せは、本日の報道から見る限り、ほとんど端末メーカーにきています。この『携帯大国』と称される日本において、最大手の端末メーカーであるNECが約200億円の営業赤字に転落するという事態は、海外事業不振に主因があるとはいえ、ただごとではないでしょう。端末メーカーの新機種開発のインセンティブが大きくそがれていることと思われます。
日経新聞の記事の最後には端末メーカーの再編の可能性が示唆されています。その再編の方向性の一つとして、携帯電話各社が端末メーカーを内部に取り込むという方向性も、合理的な解の一つではないかと私は思います。