ボーダフォンの社長が4ヶ月で交代してしまったという報道です。しかし、社長に就任したのは昨年12月であるわけですから、交代の意思決定は就任後わずか2ヶ月で行われたこととなります。
本日の日経紙面では、社長交代のきっかけとなった販売面での不調の原因を、いくつか分析しています。その中で私の注意をひいたのが、「世界統一端末」戦略です。世界中で同じデザインの端末を販売すれば、当然のごとく規模の経済が働き、コストメリットが得られます。私が間近に見た世界統一戦略の成功例が、かつての古巣のアパレルのギャップです。ギャップにおいては、製品デザインはおろか、テレビCMですら全世界統一で、大きなコストメリットを享受しています。ギャップが成功し得たのは、比較的シンプルなデザインのアイテムに集中することにより、国ごとの嗜好の差異の影響を被らなかったためですが、日本においては携帯端末が一種の自己主張のアイテムになっているため、世界統一戦略が功を奏さなかったといえるでしょう。
ただし、これらの販売面での不調は、「2ヶ月」という短期間での社長交代の真因にはなりえません。私は外資系企業の日本法人での勤務経験が長かったため、こうしたエグゼクティブクラスの日本人が短期で会社を去っていくのは、数回目前にしたことがあります。今回のボーダフォンの場合でも、またそれ以外の一般的な場合でも、日本人エグゼクティブが短期間で職を離れる第一の原因は、やはりコミュニケーション能力にあります。非常にシンプルなケースで言えば、単に英語が話せないということが原因で離職されてしまう方もしばしばいます。
ただし、最近の外資系日本法人の一つの流行として、英語でコミュニケーションがこなせて、かつ専門性がある人材を雇用すると、人件費が高くつくため、社内に同時通訳者を置いて、英語ができない有能な人材を雇用する企業も増加していることは確かです。しかし、同時通訳がいるからといって、コミュニケーションの問題は解決済とはならないのです。
今回のボーダフォンを例をとれば、以下は私の完全な憶測ですが、それほど実態とかけ離れていないと思います。まず、本社が、日本法人の販売が計画値に達していないことを指摘して、プレッシャーをかけてきます。しかし、日本法人の現場の幹部クラスは、それが本社の戦略に起因するとの思いから、津田社長に対して本社への説得を要請します。津田社長はインテリジェントなジェントルマンですから、本社の言うこともよく分かるし、現場の日本人幹部の言うことも分かるし・・・で、調整不能に陥ってしまいます。
こうした状況において、リーダーにとって大切なのは、コミュニケーションの前提として、自己の主張をしっかり持つということです。少し極端に言えば、会社が苦境にあるときは、みんなの言い分をよく理解する頭のいい社長よりも、多少バカでも強い信念を持った社長の方が、会社を苦境から救い出すことが多いものです。
『端末・サービスの開発は自分が引き続き経営責任を持つ』という津田氏の発言も、なんだかムシのいい話に聞こえてしまします。