ネット上のソース記事を引用するまでもない、西武問題ですが、本日の日経新聞には、企業経営の根幹に関わる興味深い記述がありました。西武問題は、堤氏の個人的意識の欠落と片付けてよい問題では決してありません。現在ベンチャー企業のIPOブームですが、そうしたベンチャー企業のオーナー経営者も自らの利益と他の株主の利益相反という問題をあまり意識していないケースが多く、我々がこの問題からきちんと学ばねば、第二第三の西武問題が起こることが考えられるからです。
【企業価値を引き下げると相続税が減る???】
まず、本日の日経新聞から部分的に引用をしたいと思います。
(引用始)
「加えて、収益力を抑制することはコクドの企業価値を引き下げることになり、堤前会長から後継者への将来の相続税の節約につなげようとも考えていたようだ。」
(引用終)
大企業の経営しかしらない方は、中小企業が自らの企業価値を減らそうとして様々な手を尽くしいると聞くとびっくりされるかもしれませんが、これは相続税の軽減を目的としているからです。相続税を軽減するためには、株式の価値を減らすことが有効であり、そのためには利益を減らすことが有効な手段であったりするのです。例えば、日興コーディアル証券の事業承継対策とのタイトルがつけられたページには以下の記述があります。
(引用始)
3. 利益の引下げ
短期的な対策としては、次のようなものがあります。
・不良在庫処分
・不良債権償却
・固定資産の売却損の計上
・従業員への決算賞与支給
・役員退職金の支給
中長期的な対策としては、次のようなものがあります。
・減価償却資産の購入
・レバレッジド・リースまたはオペレーティング・リースの導入
・生命保険への加入
(引用終)
同様の記述はファイナンシャルプランナーのテキストにも頻出されており、これが同族経営の経営者に対するアドバイスの常套句なのですが、こうしたことを株式公開企業が行っては、他の株主との利益相反になるため、絶対行ってはならないのはいうまでもありません。
確かに、今回このようなことが行われたのはコクドという非公開会社ですが、傘下に西武鉄道のような上場企業を抱えているのであれば、他の株主と利害をともにする覚悟で経営に当たらねばなりません。
そのためにまず行うべき第一のステップが資本関係の透明化です。ニッポン放送買収も、元をたどれば資本関係のゆがみがあったことが原因です。歴史のある企業グループは非常に複雑な資本関係を有しているのが常ですが、そうした複雑な構造になった経緯を調べると、現時点ではあまり意味のないことが多いものです。透明性の高い資本関係を再構築する動きが、ニッポン放送・西武問題を受けて、日本で加速化していくことを希望します。
【過度な負債は企業価値を損なう】
第二のポイントを知る上で有用な記述を日経新聞より引用します。
(引用始)
「80年代後半から90年代初めにかけて、コクドは毎期50億~140億円の営業利益を上げていた。一方で60億~170億円の借入金金利を払い続け、最終利益は1億~2億円台まで圧縮された。課税対象となる法人所得と最終利益は必ずしも一致しないが、重い金利負担は所得減らしに結びつく。」
(引用終)
負債による節税メリットが企業価値を向上させることは、当サイトでも繰り返しお伝えしてきましたが、度を越えた負債への依存は企業価値を損なうということも、財務理論上知られています。これがMMの第三定理で、財務破綻に伴うコストの存在により、ある水準を超えた負債は企業価値にとってマイナスに作用すると言われています。企業価値向上のために負債を活用するには、要はバランスが肝心であるということです。