東証が、「大幅な株式分割に伴う株価の異常な高騰を避けるために指針を設け、転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行後間もない企業には分割の自粛を求める(引用)」との報道です。
株式投資を行う人にとって必須の非常に基本的な知識ですが、株式分割を行っても、1株あたりの本質的な価値は変わることはありません。100分割であるならば、それは1万円札を100円玉100枚に両替してもらったことと同じで、100円玉100枚の方が1万円札1枚より価値がある、などという人は決していないのに、なぜか株式になると、こうした基本的な事柄が見えなくなってしまう人が結構いるものです。その裏返しである、形式的減資は、100円玉100枚を1万円札1枚にかえてもらうのと同じことで、減資で株主の価値が減るのは、その後第三者からの増資が確定した時点です。減資については、過去に書いた過去のエントリーが参考になるのでご参照下さい。
では実際問題として、なぜ株式分割に伴って株価が乱高下するかといえば、その仕組みについて、本日の日経新聞の記述を引用したいと思います。
(引用始)
「ただ、現行制度の下では、新たに発行される九株が株主の手元に届くには株券の印刷などで一ヵ月半ほどかかる。この期間に既存の株主は売りたくても旧株の一株しか売れない。このため、市場に出回る株式数が実態に比べ極端に少なくなり、わずかな買いでも株価は上昇しやすくなる。」
(引用終、強調の太字は私の判断)
基本的に私は、こうした市場の明らかな歪みに東証が乗り出してくれることは、健全な市場の育成という観点から大歓迎ですが、今回の株式分割の指針については、「企業にさらに詳細な情報開示を求める」としている方向性に多少疑問を感じます。株式分割に伴って株価が乱高下するのは、上記に引用したとおり、子株の流通までに約1月ほどのタイムラグがある点であり、そのタイムラグの主因は「株券の印刷のため」とされています。私は株券を発行する実際の事務手続きには明るくないのですが、なぜ印刷するだけに1ヶ月もかかるのでしょう?仮に実際1ヶ月かかるとしても、なぜ分割と同時に子株を売却できるように、タイミングを調整できないのでしょうか?なんらかの事情はあるとは思いますが、それは実にくだらない事務上の問題であると推測され、いくらでも工夫によってこうしたタイムラグを解消できることは可能であると思います。
分割により乱高下してしまった企業の株価のチャートの一例が、最近西武球団買収に名乗りをあげたインボイスであり、ライブドアもまた然りです。株式分割に伴う乱高下の最高値で株を買ってしまった人は、それは本人が株式投資の基本的知識すら習得することなく火遊びをしたことによる自業自得とも言えます。ただ、その一方で、そうした間抜けな個人投資家を利用して自社の株価をつりあげ、より多くの資金を調達して自らの支配欲を満たそうとする、私から言わせれば「悪質」に見える経営者が、特に新興市場に多く存在することも、事実であるといってよいでしょう。
一部のケースを除いては、既存の株主軽視も甚だしい、MSCB(Moving Strike Convertible Bond)ですが、これはisologueの記述で教えてもらったことですが、同じ用語で検索してもひっかかるのは日本語のサイトのみです。このことから「推測」できるのは、日本に比べた場合のマネーリテラシー先進国であるアメリカでは、こうした既存株主軽視の資金調達手段は認められていないのか、可能であっても、市場の浄化作用により淘汰されていくのだと思います(あくまでも私の推測で、本当の事情は定かではありませんが)。株式投資においても、日常生活で発揮しているような「常識」が働きさえすれば、そもそもこうした規制すら必要ないはずなのです。