「ライブドアがニッポン放送のフジテレビジョンに対する新株予約権の発行による増資差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁(鹿子木康裁判長)は11日、「フジサンケイグループ経営陣の支配権維持が主目的で、不公正発行に当たる」として、予約権の発行を差し止める決定をした(引用)」との報道です。
私が改めていうまでもなく、この両者の争いの真の源をたどれば、「じいさん」連中の支配構造を破壊して、経済界で頭角を現そうとする堀江氏の支配欲と、そうはさせじとするフジテレビ・ニッポン放送経営陣の抵抗に他ならず、そして、この問題がこれほどまでに報道で大きく取り上げられるのは、(おおまかにいって)若年層は堀江氏に、中高年層は現経営陣側に肩入れするという、世代間闘争という側面があるからに他なりません。
しかし、裁判ともなれば、世代間闘争などということを争うわけにもいかず、争点はニッポン放送株主の「株主利益」というテーマになり、それを両陣営が争うというのは、私には滑稽ですらあります。
最近報道でも取り上げられてきたように、ライブドアをはじめとする新興企業の多くが、これほどまでにハイペースで成長を遂げてきたのは、株式分割によるところが大きいといってよいでしょう。株式分割は企業価値になんらプラスに作用しないのに、個人投資家の錯覚を利用して自社の株価をつりあげて資金調達をしてきた企業が、「株主価値」向上を謳って、裁判で訴えられる側ではなく、訴える側に回るというのは、全くナンセンスです。
一方で、フジ側も長年の資本構造の歪みを放置してきた企業が、なにを今更「株主価値」なんだ、という感もあります。
しかしながら、こうした裁判の場で、両陣営のビジネスプランの片鱗が見えたことは、大変興味深いことです。買収により企業価値がどう変化すると両陣営が考えているのか、簡単にまとめてみたいと思います。
【ライブドアのビジネスプラン】
ライブドアの主張しているニッポン放送の企業価値増加のためのプランのコアの部分は、私なりの言葉でまとめると以下のようになります。
「現ラジオリスナーをライブドアポータルに移動させることにより、ライブドアの広告収入が増加し、その70%をニッポン放送に還元する。」
もちろん、上記はコアな部分を抜き出したものだけで、ラジオとインターネットというメディアを融合させる上でのディテールのアイデアは、面白いと思わせるものもあり、その点ではライブドアのプランを評価したいと思います。
しかし、これだけ世間を騒がせる買収の果てに実現される株主価値の向上というのは、株価が12,493円から13,808円へ上昇することによる、わずか10%足らずのものです。また、この10%足らずの株価上昇の前提となっている数値根拠は、「コアリスナー1,050万人が3年間でライブドアの顧客となる」とのものですが、皆さんのお知り合いの10人に1人がニッポン放送のコアリスナーなのでしょうか?また、その人たちは皆、ラジオのパーソナリティの呼びかけに応じて、ほいほいとライブドアに会員登録するお人よしなのでしょうか?
ネットとラジオの融合策については、敬意を払うべき新奇なアイデアも多く見られますが、どうしても「ニッポン放送の株主価値の増加」というゴールが先にありきですから、その数値をプラスにもっていくために、多くの前提条件にお化粧を行っている点が難点です。仮に、このプランを持って銀行借入を申し込んでも、100%融資は実行されないでしょう。「アイデアは良いが、数値化を正当化するには至らない」と、そんなところでしょうか?ですから、ライブドアによるニッポン放送の買収が成立したときに笑うのは、ニッポン放送の株主でもライブドアの株主でもなく、堀江氏本人とそれに肩入れする若い世代であり、その笑いは経済的価値の増加によるものではなく、支配欲が満たされたものであることに他ならないのです。
【ニッポン放送のビジネスプラン】
ニッポン放送側は、ライブドアに支配されることにより、どれだけ企業価値を損なわれるかを言えばよいので、「ビジネスプラン」と呼ぶのははばかられますが、この裁判により、貴重なセグメント情報が公開されたことは、我々にとっては興味深い反面、重要な情報が流出せざるを得なかったことは問題でしょう。買収騒動に巻き込まれると、こうした情報まで開示せざるを得ないという点を肝に銘じた上で、他の上場企業は買収対抗策を練り上げる必要があります。以下に「フジサンケイグループから離れることによる損失」の金額を列挙しておきます。
① イベント事業関連の売上減少
売上 ▲71億円 粗利益 ▲28億円
② ポニーキャニオンの映像事業の収益減
売上 ▲234億円 粗利益 ▲80億円
③ ビッグショットの広告・イベント運営・販促プレミアム等の収益減
売上 ▲29億円 粗利益 ▲4.2億円
④フジサンケイエージェンシーの保険収入の減少
売上 ▲10.65億円 粗利益 ▲1.83億円
ららら様
コメントありがとうございます。
両陣営がこれだけ企業価値増加策に関する数値根拠を示しながら、裁判官はこれに対して実質的になんらの判断もしていない点については、私も多少疑問が残ります。
また、ライブドアの手法は「違法」とは言えないにしろ、「法律の趣旨を無視して」という点については、同感です。声を上げるべき者があるとすれば、それはライブドアの現株主だと思うのですが、なんらそういう動きが見られないのは、不思議な限りです。
正直、これだけの損害を裁判所に示しながら尚「重大な損害を及ぼすとは認められない」とされたのではたまったものじゃないと思いますが・・・・・
というか、裁判官はアホなのでしょうか?
仮処分が認められるのはいいんです。認められないとすると事実上、勝負あり、となってしまうから保全するために認められるのは理解できますが、その理由がこれではアホなのかと・・・・
こんだけ損害があって、尚且つ、「たいしたことないね」と言われたのでは事実上、認められる事例なんて無いような気がしますし。
それにしても、今回の騒ぎでいろいろと株関連を勉強するようになりましたが、ライブドアのIR情報というのは一体何なのでしょうか?
マスコミ向け、又は官庁への公告告知には一言も貸し株について触れられておらず、自社の、しかもライブドアのIR情報には載せず、ひっそりと一般企業情報の公告の中に隠すように告知されており、最後の一行だけで書かれています。
まるでアリバイ作りです。
どう見ても、人にこの文章を見られたくないようにしか見えません。
結局のところ投資家はIR情報を開示してますよ~なんていう甘言に誘導されてホイホイ買えば、開示されて無い密約のお陰で戦略すら立てられないわけです。
他にもいろいろあるのですが、こういうセコイ手を散々見ると、本当に嫌になってきます。
そもそも、正式な契約条項に貸し株条項が無いのなら社長個人の契約となり、品貸料は社長個人の利益となるわけで、これって背任行為なんじゃないんですかねえ?
まあ、現行の規定に役員が自社株を貸し株してはいけないというのは無いでしょうけど、やる事為す事、法律の趣旨を無視して姑息な真似ばかりで気分がわるいのです。
いや、正確にはそれはいいのです。
但し、言うに事欠いて相手を詰るのにそれを使う破廉恥ぶりに怒りが涌くのでしょう。
嫌な時代になったものです。
Posted by: ららら at 2005年03月14日 04:40