イトーヨーカ堂がショッピングセンター(SC)の開発・運営事業に乗り出すとの報道です。ダイエー、イオン等、他の総合スーパーと呼ばれる業態が苦境にあることは、皆様ご存知の通りです。しかし、その苦境から脱却するための戦略は、各社、かなり異なる様相を呈しており、非常に興味深いです。
①ヨーカ堂は「なんでもやる」道を選択
総合スーパーも、もともとなんでも売るタイプの業態でしたが、私に言わせれば「中途半端に」なんでも売ってきた感があります。その点を反省して、ダイエーは、そのリバイバルプランにおいて、「食品に特化」という決断をしたことは、過去のエントリーでも取り上げたとおりです。下記の過去エントリーをご参照下さい。
対するヨーカ堂がSCの開発・運営に乗り出すということは、特化ではなく品揃えの拡大を志向するという、全く対極的な方向性であると見ることができるでしょう。ここで、気になるのが、展開するSCのコンセプトですが、「ライフスタイル」というなんとも漠たるコンセプトとなっているのが気がかりです。ライフスタイルといってしまえば、娯楽から日常生活から、何でも入ってきてしまうからです。例えば、本日の新聞に登場した、テナントを連想させるキーワードを抜書きしてみましょう。輸入ブランド・高級アパレル・シネマコンプレックス・介護用品・フィットネスクラブ・食品スーパー・生活雑貨・・・これらのテナントが集結するSCとは一体なんなのでしょうか???
集客に重要なのは、明確なコンセプトであるというのは、マーケティングの基本原理で、そのコンセプトが「ライフスタイル」と言ってしまった途端、焦点がぼけぼけになってきてしまいます。
②懸念されるデベロッパーとテナントの馴れ合い
今回のSC事業は三井物産との共同出資という形態を取りますが、懸念されるのはデベロッパーとテナントが馴れ合いになってしまわないか、という点です。ヨーカ堂は当然自らが核テナントとして出店するつもりですし、三井物産は同社系列の松竹系のシネマコンプレックス、介護関連給食会社等をテナントとして送り込みたい思惑が見てとれます。デベロッパーとテナントが同じ資本の傘下にあれば、不採算のテナントの退出が迅速になされない可能性があり、SC全体として成功を収めるためには、こうした馴れ合いを排除する規律を持つことが肝要です。
③ダイエーの末路をほうふつさせる総花的な事業構造改革
こうした動きの背後にあるのが、ヨーカ堂の事業構造改革ですが、下記にリンクを掲載いたします。
この事業構造改革にあえて辛口のコメントをすれば、基本戦略は抽象的すぎて方向性が見えず、具体的方針は、これまた何でもありで、盛り込みすぎです。企業が事業ドメインをどう規定するのかというのは難しい問題で、広すぎても狭すぎでも問題ですが、このプランは明らかに広すぎです。ダイエーの凋落の原因の一端は、ドメインが広すぎたことにあるといわれていますが、このプランからどことなく、かつてのダイエー臭が漂ってきます。
最近のヨーカ堂の大きな動きとしては、藤巻氏起用のIYG生活デザイン研究所と、このデベロッパー事業進出ですが、IYG生活デザイン研究所とSCのテナントは競合するはずで、かなり異なる方向性のもとの動きと見ることができます。こうした、全く別方向の大きな新事業を同時期に開始して、ヨーカ堂グループ全体としてまとめきれるのでしょうか?
総合スーパー各社にとって、今後2~3年で新たな方向性の下で確実な成果を収めることが鍵となるでしょう。その時点での勝ち組スーパーは、どこなのでしょうか?興味がつきない流通業です。