昨日は鉄鋼業界の株式持ち合いの報道が、本日は石油業界の株式持合いの報道が、日経新聞に登場しました。昨今の潮流を受けて、この動きを表層的に分析するならば、「ライブドア騒動を受けて敵対的買収から身を守るため、株式持合いをアナウンスし、そのアナウンスメント効果により、いざというときには持ち合い企業がホワイトナイトとして支援する」といったところになるでしょうか。しかし、今後、敵対的買収に備えて、同一業界内で株式を持ち合う動きは、日本全般に広がることはまず考えられず、伝播する業界は予測可能です。
上記2つの業界の共通の特色を考えていただきたいのですが、それは、いずれも(1)寡占状態にあり、(2)取り扱う製品がコモディティー製品であり差別化が困難である、という点です。こうした業界において、戦略的に操作しうる変数というのは、価格と供給量しかありません。むやみに価格を引き下げたり、供給量を急増すれば、一時的にはライバルを出し抜けるかもしれないですが、長期的には業界全体の超過利潤を減じてしまうため、こうした業界は「暗黙的談合」という戦略を必然的にとるわけです。もちろん、明示的に談合すれば法に触れるので、相手の出方を見ながら、価格や量を調整するわけです。
しかし、こうした馴れ合いの業界において、一番怖いのは、ライバルの裏切りです。温存された業界秩序を不意打ちする裏切りさえなければ、業界内はみなハッピーになるわけで、今回のような株式の持ち合いは、そうした裏切りのインセンティブを削(そ)ぐことになります。なぜならば、ライバルを出し抜いて圧倒的優位にたっても、自らの保有資産であるライバル企業の株式の価値が大きく減じるからです。
ですから、今回持ち合いを発表した二業界は、その業界特性から、業界全体の利益の保護という観点から持ち合いをしたくてうずうずしていたわけですが、ライブドアというピエロの登場により、「敵対的防衛から身を守る」という世間的に非難を浴びない口実を隠れ蓑に、長年の悲願を成就できたのだ、と考えることの方が、より妥当な分析だと思います。
ですから、上記の二要件にあてはまる業界を探り出し、株を買っておけば、短期的な利益を確保できるかもしれず、デイトレーダーの方には、一考の余地があるかもしれません。しかし、長期的投資を志向するのであれば、こうした業界には、非効率が温存される傾向が強いため、さらなる詳細な調査をしてから、投資の可否を判断されるのが賢明だと思われます。