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2005年04月07日

配当は「快楽」?

本日の日経新聞15ページには『投資を考える』と題した連載コラムの『配当新時代④』が掲載されていました。同コラムの要旨をかいつまんで、ご紹介すれば、「個人投資家の注目は配当利回りの高い銘柄に集中している」との内容です。

【配当とMM理論】
配当が個人投資家にとって有益か否か、という点は、実は中々難しい論点です。ここで、伝統的なファイナンス理論であるモジリアーニ・ミラーの理論をご紹介しておきましょう。まず第一の「税のない世界」なるものを仮定すれば、配当政策、すなわち配当を多くしようが少なくしようが、それは株価に全く影響を与えません。しかし、当然現実の世界には存在する税(所得税)を考慮に入れると、配当をもらってしまうと、キャピタルゲインに対する課税に比べて、より早い時点で課税されてしまい、課税の繰り延べ効果が得られないという点で不利であり、この理論通りに現実の株価が動けば、増配のアナウンスは株価に対してネガティブに働くはずです。この考え方を個人投資家の方に分かりやすく解説したのが、ベストセラーになった安間伸さんの『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ』という本で、『突然ですが、私は配当が嫌いです。なぜかというと、損だからです。(同著より引用)』と、単純明快な文章で、驚くべき結論を提示しています。

【行動ファイナンスからの説明】
しかし、このブログをお読みの皆様も恐らく配当は好きなはずで、また多くの方がそうであるからこそ、フジテレビがライブドアに対抗して、大幅増配をアナウンスしたとき、フジテレビの株価は上昇したわけです。MMの理論に反して増配が株価の上昇を招く理由を説明する学問として、行動ファイナンスなる学問がここ数年で急速に進化しました。書店で関連本が数冊でていましたが、最近出版された『行動ファイナンスと投資の心理学』という本は、その読みやすさで抜きん出ていますので、興味のある方にご一読をお勧めします。
一般の人々に配当が好まれる理由をいくつかの観点から説明していますが、快楽的フレーム化という観点が、最も私がうなづける説明です。すなわち、配当には「株価が下がったとしても、いつかは配当という形で、お金を取り戻すことができると考えることで、慰めを得ることができる。(引用)」というのが、大まかな論拠です。これを、より一般的にいえば、「小さいポジティブな結果が、それよりもはるかに大きい損失を部分的に相殺するために利用される(引用)」ということになり、これは一抹の救い効果と呼ばれているらしいです。これは、保険の世界でも応用できる論理でしょう。本当は掛け捨て保険の方がコスト的に優位なのに、配当がある保険や終身保険が好まれるのは、やはり「一抹の救い効果」によるところが大きいでしょう。
また年金生活者が、日常の支出を補うために元本に手をつけることに、大きなためらいがあることも、配当が好まれる理由として説明されています。私の周囲では、これは年金生活者に限定されることではなく、右肩上がりの昇給を望めない今、減少する収入を埋め合わせるインカム・ゲインを得る手段として、株式の配当やマンション投資などが関心の的となっています。

【プロフェッショナルとして誤解とどう付き合っていくか】
株に関しては、配当のみならず、一般の投資家の方は様々な錯覚を抱いています。「株式分割は投資家にとってプラス」などというのが誤解の最たるもので、それが100分割後の乱高下を招いたのですが、問題であるのは、一部のプロフェッショナルですら、こうした誤解を抱いていることです。先日ご紹介した内藤忍氏の『資産設計塾』という良著ですら、株式分割を株主優待と同様なメリットとして錯覚してしまっていることは、良著であるがゆえに遺憾です。
配当利回りが銘柄選別において大きな役割を果たしつつある、という現象については、私から助言できることがあるとすれば、投資対象はあくまでも株式なのですから、株式投資家としての当然のエチケットである、発行体の財務分析を行ってから、投資を実行すべきである、ということです。いくら目先の配当利回りがよくても、将来的に事業が衰退していくことが目に見えていれば、それに伴う元本の減少は、配当という「一抹の救い」では補え切れないものとなることでしょう。
「インカム・ゲイン」に着目するにしても、株式という商品の性格上、必ず元本の増減があるのだという、基本に立ち返って、投資の判断をすべきではないかと思われます。

Posted by Ken Kodama at 2005年04月07日 11:19
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