執筆者のプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif

2005年04月12日

『村上ファンド』を通して証券市場のモラルを考える

村上ファンドが、今度は大証の株を取得したとの報道です。村上ファンドの狙いは何かといえば、NIKKEI NETの記述を以下に引用することとしましょう。

(引用始)
『大証は証券決済の安定性確保などを理由に200億円を超す内部留保金を抱えており、これを新規投資や株主配分に回すよう求めるとみられる。』
(引用終)

村上ファンドは以前からも、同様の投資活動を行ってきましたが、フジテレビ騒動で一躍、世間の高い注目を浴びました。彼等の行動は、古い世代の経営陣が眉をしかめそうだ、という点で、ライブドアやMSCBの発行で側面支援したリーマン・ブラザーズ等と、なんとなく「似ている」と思われる方が多いことと思います。しかし、ご異論があることと思われますが、私は、一連の村上ファンドの動きはモラルにのっとったもので、株式百分割でのし上がったライブドアはモラルがない、と考えます。そのように私がいう根拠は、村上ファンドは市場の歪みを正しつつ儲けを得ようとしているのに対し、ライブドアは市場に歪みを意図的に形成することにより儲けを得てきたからです。その方向性は全く逆で、以下に村上ファンドが、社会経済的に果たす役割について、簡単に考えてみたいと思います。

【アービトラージャーの社会的な役割】
村上ファンドを考える前に、最初に、アービトラージャーと呼ばれるトレーダーについて考えてみたいと思います。アービトラージャーは日本語では、裁定取引業者と呼ばれ、市場の短期的な歪みを利用して儲けを得るトレーダーのことです。例えば、株の先物市場と現物市場の間の歪みを利用して儲けを得るタイプのアービトラージャーは、かなり多く存在します。彼らは、先物市場が現物市場に比べ割高になったときに、「先物を売り現物を買う」というトレードを行います。そして、値段の水準が戻ったときに反対売買を行うことにより、儲けを得るのです。
彼等の行動は純粋に数字に基づくもので、そこにはモラルの片鱗もないように思われますが、彼らがアービトラージという市場の歪みをとりさるトレードを行うことにより、先物市場と現物市場は連動し、例えば先物市場をヘッジ取引等の用途に使用することが可能になるわけです。つまりアービトラージャーの利己的な行動により、先物市場は現物市場の価格と連動し、ヘッジ取引が可能となるのです。

【村上ファンドの役割は】
村上ファンドが着目するのも、やはり歪みです。しかし、彼等の着目するのは、アービトラージャーのように2つの市場間の歪みではなく、株式の本質的な価値と市場で取引されている価格の間の歪みに着目します。例えば、今回の大証のケースでは、大証は巨額のキャッシュを持っていながら、それを有効に活用できません。村上ファンドはそれを有効な投資に回すか、あるいは使い道がないのであれば本来の出資者である株主に返還しなさいと、至極当然のことを行うように自らが大株主となって経営陣に迫ることにより、大証の本質的な株式の価値が市場で顕在化し、それにより、儲けを得ようとしているのです。
彼等のようなファンドが存在するということは、怠慢な経営陣の元、本来得られるはずの利益を手にできなかった従来の株主にとって救世主のような役割を果たすといえるでしょう。またマクロ的に見ても、眠れる資金を有効に循環させる、という意義も果たしているといえるでしょう。

【マネーリテラシー教育のあり方】
一方で、ライブドアの手法にモラルがないと私が考える理由は、百分割に関して色々な場で述べてきましたし、また新聞でも詳しい解説がたくさんなされていたため省略しますが、SBIの北尾氏もライブドアの手法が「地下水(証券市場のことらしいです)を汚している」、すなわち秩序を乱していると感じたからこそ、のりだしたとの趣旨のインタビューを朝日新聞で行っていました。ですから彼も、ライブドアのモラルという点では、私とそれほど意見が異ならないものと思います。
我々は学校教育や家庭教育を通して、社会で生きていくための様々なモラルを学びますが、お金に関するモラルについては学んだことはありません。証券会社に在職したことがある人ですら、「インサイダー取引は禁止されている」という法律は目にしたことはあっても、自分の子供に、ではなぜインサイダー取引はいけないのかと聞かれたら、しどろもどろになってしまう方がほとんどではないでしょうか?お金儲け自体はよいことでも、お金を儲けるためにやっていいことと悪いことがあるということを、細かい法律を羅列するのではなく、その背後にあるモラルにまでさかのぼって教えることが必要なのではないでしょうか
マネーリテラシー教育もまだ議論に上り始めた段階ではありますが、こうした本質的なことを是非とも取り上げてもらいたいものです。

Posted by Ken Kodama at 2005年04月12日 17:39
Comments
Post a comment









Remember personal info?