中々正式発表がされませんでしたが、ようやくダイエー社長に日本HPの樋口氏が就任するとの報道です。樋口氏は本日の日経新聞でも略歴が記されていましたが、日本HPのサイトによれば、「松下→ボストン・コンサルティング→アップル→コンパック→HP」と有名企業で重要なポジションを歴任された方です。また、CEOに決まっている林文子氏の経歴は、私も今日検索して初めて知りましたが、なんと高卒で自動車販売に手を染めたのは31歳のときからです。お二人とも、純粋な小売業を内から見た経験はないわけですが、果たしてダイエーの再生という難題をこなすことは可能なのでしょうか?
小売業界はどのような人にとっても身近な存在です。スーパーや百貨店で買い物をしない人などいないわけですから、異業種出身のお二人とて、消費者として小売業界との接点は既に有しており、ダイエーに対しても問題意識は持っているはずです。経営者としての輝かしい成功に彩られた経験があり、かつ、消費者として小売業に接してきたからこそ、「自分ならなんとかできる」との思いでダイエー経営陣への就任を決意されたことでしょう。しかし私の経験からすれば、消費者として小売業界に接してきたという過信は、必ずしもプラスに働くものではありません。
私のような中小企業を相手にするコンサルタントの方も、小売業界の経験がなかったり、コンサルティングの経験がなかったりする方でも、小売業界ならば親しみがあるのでなんとかなるのでは、と考えて挑戦される方達がかなり存在します。経験がなくとも成功される方もまれに存在しますが、(1)小売業経営に私的な思い入れを入れたり、(2)計数を無視(あるいは、計数の意味が分からない)した経営を行ってしまうことにより、失敗される方が多いのも事実です。
特に後者の計数管理は小売業の経営にとっての要です。新店出店・新業態開発といった派手な部分と合わせて、既存店の経営を以下にうまくおこなっていくかが小売業にとって重要ですが、既存店の経営はすなわち計数管理といっても過言ではないでしょう。たとえば、売上高一つをとっても、それを①坪当たりの売上高でみたり②店員の作業時間で割ってみたり(SPH)③客数・平均買上点数・平均単価に分解してみたり・・・と様々な分析を行うことが可能です。小売業のトップマネジメントには、こうした分析結果から、背後の真因の問題点を嗅ぎ取り即座に行動に移すことが求められますし、全ての指標を同時に改善することは難しいため、どの指標に重点を置くか等の決断を迫られることとなります。
こうした計数の体系が頭に入っている方として、日本マクドナルドの原田CEOを先日ご紹介しましたが、彼の経歴を見ると、アップルの社長だったり(樋口氏との面識もあることでしょう)、コンピュータ業界一筋だったりと、かなり樋口氏に酷似していたりします。業界の経験がなくとも、課題を発見し解決していく能力があれば、異業種からの転進も可能であることを立証しているといえるでしょう。
トップマネジメントとしての経験をとるか、業界での経験をとるか、ダイエーでは両者を天秤にかけて、前者をとったわけです。この判断が正しかったか否かは2~3年経過してみないと分かりません。ダイエーの今後の注目していきたいと思います。