生保の株式運用に、拡大の兆しが見えはじめてきた、との報道です。以下にNIKKEI NET記事を引用しておきましょう。
(引用始)
『減少を続けてきた生命保険各社の株式運用額が拡大に転じる兆しがみえてきた。今年度は大同生命が国内株の残高を昨年度並みに1000億円強積み増すほか、前年度に削減した三井生命と朝日生命も「横ばい」を計画しており、保有株式を圧縮する動きは終息しつつある。生保の運用資産は国債の比重が膨らんできたが、景気回復や自己資本の増強を背景に運用収益の拡大を狙い価格変動の大きいリスク資産に投資しやすくなっている』
(引用終)
生保が今まで株式での運用割合を減らし続けてきたのは、今さら言うまでもなく、過去の運用の失敗を反省し、『ソルベンシー・マージン比率』なる自己資本とリスク資産の割合を示す安全性をチェックする指標を重視する経営を行おうとしてきたからに他なりません。本日の日経新聞紙面の表を見ると、2005年度の株式運用計画において、前年度比で「横ばい」としているところが多いのですが、この「横ばい」が日経新聞の言うような「拡大に転じる兆し(引用)」であり翌年度に株式運用額を拡大するようなことがあれば、私は大きく首を傾げざるを得ません。
なぜならば、もし翌年度以降に生保が株式での運用残高を拡大したとするならば、生保は株式の下落局面で株式を売却し、株式の上昇局面で株式を購入することとなり、これは明らかに愚かな運用です。
最近、私は個人投資家向けのアセット・アロケーションに関してアマゾンで洋書を取り寄せたりして勉強し直しているのですが、アセット・アロケーションの成功の鍵の一つがリバランスにあります。アセット・アロケーションは文字通り「資産の配分」ですが、仮に株33%、債券33%、REIT33%というポートフォリオを組むと一度決めたならば、この割合を貫き通すことが重要なのです。例えば何も売買はしていなくても、株の値上がりにより、上記の構成割合が株50%、債券25%、REIT25%に変化したとします。そうなった場合は値上がりした株を売却して、得られた資金で債券とREITを買い増し、当初の保有割合である「株33%、債券33%、REIT33%」に戻してやることが重要で、これをリバランスと呼ぶのです。リバランスを通じて何を行われたかを別の言い方で表現すれば、「相対的に値上がりした株式を売却し、相対的に値下がりした債券とREITを買い増した」と言えます。
これは少しも難しいことではなく、値段の安いときに買って値段の高いときに売るのは投資の基本中の基本です。生保各社の運用方針を微細に検討したわけではありませんが、一見、この基本と逆の動きを感じさせるところに、一抹の不安を感じざるを得ません。
sumio iino様
お名前入りで書き込みをいただいて恐縮です。ありがとうございます!
>これが1番の問題ですが予定利率が3%弱の状況に
>あって、少しでも利益を出して体力を損なうことな
>く配当を出し続けなければならない呪縛をおっています。
確かに国債利回りが1%台の時代なのですから、どうしても予定利率を死守するには、株式というリスク資産の割合を増やさざるを得ないわけですね。
>従って、株価が上昇すると思えばなりふりかまわ
>ず買い増す必要がある訳です。
今の「株価の上昇」をあまりにも短絡的に「将来の株価の上昇のサイン」と捕らえているように思えて、そこが私は怖いのです。また大損しなければよいのですが!
>長期の保険を抱えている為、債券についてはダンベル
>型の投資が求められリバランスがとりにくい状況にも
>あります。
長期国債を保険会社の長期債務とマッチングさせている、ということですよね?そうすると、「予定利率」という土俵で保険会社は勝負している以上、将来的には日本の生保もアリコ(でしたっけ?)のように債券中心での運用をするのが望ましい姿で、株に手を出さざるを得ないのは、「あまりにも高く設定した予定利率」という呪縛から逃れるまでの、過渡的な宿命なのでしょうかね~。
勉強会後の場でまたお話を伺いたいですね。5月は飲み相手に困ることがありましたらお誘い下さい(笑)!ではまた!
Posted by: 児玉 at 2005年04月19日 10:04リバランスは分かりますが、ほんとうかな?現在、生保は失われた10数年からまだ脱しきっておらず、株価が上昇すると思えばキャピタルを狙わざるをえない状況にあります。根拠の一つがソルベンシーマージン比率を高めに維持する為に劣後ローンを始とした借入金を早期に返済する必要があります。第2に、これが1番の問題ですが予定利率が3%弱の状況にあって、少しでも利益を出して体力を損なうことなく配当を出し続けなければならない呪縛をおっています。従って、株価が上昇すると思えばなりふりかまわず買い増す必要がある訳です。
低価法を早くから採用させられた生保業界では、含み損はあまり抱えていない代わりに、含み益も脆弱です。しかし、株式を売却してきた結果、株価上昇時に購入すれば即含み益が狙える状況にあり、株が上昇した暁には売却益を使って負債の返済や自己資本の充実に充当するはずです。それもこれも、バブル期に発売した5.5%の予定利率の30年満期や終身保険のためです。団体保険は毎年予定利率を変更できますが、個人保険は未だに予定利率の変更が完全自由化されていない結果です。
長期の保険を抱えている為、債券についてはダンベル型の投資が求められリバランスがとりにくい状況にもあります。
従ってここで株式投資に失敗すれば、責任をとらされる確率も高く資産運用も大変で、いきおい他社と横並びにならざるを得ない事もあるでしょう。