一連のホリエモン騒動を見ていて、『銭っ子』というドラマをフラッシュバックされた方はいないでしょうか?私の記憶が正しければ、今から25年くらい前に、「脳みそを溶かす」といわれる1時過ぎの時間帯の昼ドラとして放映されていたのが『銭っ子』です。全編は覚えていないのですが、戦後のどさくさで、ある都市開発にとってどうしても外すことができない小さな土地を手に入れてしまった少年が、それを驚くべき高い値で大人たちに売り抜けるシーンだけは、なぜか今でも覚えていました。そして、同様の結末を迎えたことは、皆様ご存知の通りです。
【やはりババをひいたのはライブドア株主】
今回の騒動で得をした人、損をした人、という切り口での分析が多くなされているようですが、本日の日経新聞では、GCAの佐山展生氏が『文句なく得したのはリーマン・ブラザーズ証券グループ、村上ファンド、SBIの三者だ。(引用)』と述べています。リーマンについては、若干異論があるので後でそれは述べるとして、村上ファンドが「してやったり」というのは間違いないでしょう。しかし、当然マネーの世界では、得をした人の影で損をした人がいるのが常で、それはフジとライブドア両者の株主であり、特にライブドアの株式の本質的価値の低下は尋常ではありません。
800億円のMSCBが全て株式に転換され、また、フジへの第三者割当増資により、株式数の大幅な増加による希薄化のダメージをもろにかぶるのが既存のライブドア株主です。日経新聞紙面によれば株式数は62%の増加とのことですから、株式数の増加による希薄化により、ライブドアの株式の本質的価値は4割低下したことになります。もちろん、これは株式分割ではなく、増資であるため、得られた資金を活用した株主価値の増大、という側面を合わせて考えねばなりませんが、低下した4割を補うだけの株主価値の増大があるとは、直感的に考えにくいですし、当然、ライブドアに数値化したプランがあるわけでもありません。日経新聞によれば「株価は2割安」とのことですから、現段階では下記の式からも分かるように、市場は今回の提携により2割の株主価値の増加があった、と判断しているようですが、2割の株主価値の増加ですら、怪しい気がします。
2割安 = 希薄化(4割減) + 株主価値の増加(2割増)
【新興市場株のリスク】
ライブドアが上場されているマザーズのような新興市場においては、機関投資家という物言う大株主が存在しないため、株主利益を損なうようなファイナンスが行われることがしばしばあります。IPO人気の加熱はまだ冷めていないようですが、新興市場株への投資を考えている方は、このリスクをしっかりと認識する必要があります。すなわち、機関投資家という「にらみ役」がいないため、個人投資家自らが開示文書に目を通し、「にらみ役」となれるような人でなければ、やけどをする可能性が大きいということです。
一方で、ライブドアのようなケースでは、ホリエモン自身が大株主であり、彼自らが株主利益を損なう経営等行うはずがない、と信じていらっしゃる方もいることでしょう。しかし、そのような方は彼がライブドア株をいくらで取得したのかご存知ですか?彼自身はライブドア株の株価が、たとえ100円にまで下がったとしても、取得価格と比較すれば全く損をしていません。しかも、ここまでライブドア株の株価が上昇したのも、百分割という手法で市場を幻惑させてきたからで、必至の経営努力によりここまできたのとは、全く事情が異なります。つまり、ホリエモンという大株主の利益は最近ライブドアの株主となった方(高い値で買った方)の利益とは一枚岩ではないという点に注意する必要があります。
【リーマンの損得】
リーマンは、貸株を早期に返却したことから考えると、「空売りを繰り返す」ことによる利益はあまり得られなかったと考えてよいでしょう。したがって、転換条項にある通り、10%のディスカウントでライブドア株を取得して市場で売却したわけですから、800億円の10%である80億円とそれほど大差ない金額が、今回のスキームによるリーマンの収益と考えてよいでしょう。
しかし、今回の騒動で日本市場で失ったレピュテーションというのは、かなり甚大なのではないでしょうか?リーマンという名前の認知度こそ拡大したことでしょうが、それはリーマンの望む方向とは異なることでしょう。加えて、クライアントがリーマンにカモにされていると高笑いするアドバイザー等も出てきてしまったりして、「顧客をカモにするあくどい証券会社」とのイメージ(実態は・・・私は詳しく知りませんが・・・)がついてしまったことは、リーマンの「想定外」だったのではないでしょうか?