最近の報道で、米自動車業界がかなり苦しい状況にあることは、皆様既に小耳にはさまれていることと思います。かつて、フォード自動車の日本法人に勤務した私として、なにかコメントしたいと思っていたのですが、最近、執筆「欲」が高じて、なにかオリジナリティのある視点が提供できないとエントリーを書くことにためらいが出てきてしまって、米自動車ネタではオリジナリティのある視点が提供できずじまいであったため、書けずじまいでした。
本日の国際面には『GM危機 見えない出口』と題したコラムの後編が記載されていますが、面白いと思ったのは、GMとGMAC(GMの金融子会社)の収益の関連です。以下、興味深い記述を引用してみたいと思います。
(引用始)
『市場は「GMとGMACは表裏一体」とみるため、GMの投資不適格への転落はGMACの危機に直結する。GMACの資金調達コストが跳ね上がると、魅力的なローンの提供は難しくなり、さらに新車販売が落ちる-。そんな連想が働く。』
(引用終)
上記の記述を面白いと私が感じたのは、いわゆる教科書で学習するような多角化のメリット・デメリットに反する部分があるからです。GMは自動車製造業であり、GMACは金融業ですから、多角化の類型としては、本業に関連のない部分に進出する、いわゆる非関連多角化という類型に分類されます。非関連多角化をすると、当然、新しく進出する分野にはノウハウがないため、最初は苦労しますが、ある程度軌道に乗ってくるとポートフォリオ理論で説くところのリスク分散効果を手に入れることができます。つまり、自動車製造業での収益が好ましくない場合でも、金融業での収益がそれを補い、両者の収益に関連性が希薄であるほど、高いリスク分散効果が手に入れられるのです。米自動車業界の不振は今にはじまったことではなく、今まではGMもこのリスク分散効果の恩恵に与っていました。
ところが、非関連多角化において金融業界を選んでしまうと、親会社の問題が「安全性」にまで侵食してしまった場合、逆にリスクが増幅されてしまうということが、最近GMの騒動からの私の新たな発見です。というのも金融というのは信用力を源泉とするビジネスであり、製造業の金融進出の場合、その信用力の源泉は親会社の製造業者のB/Sの健全性に他ならないからです。
こうしてみると、北尾氏率いるソフトバンクの金融グループがソフトバンク本体と距離をおきつつあるのも、「二人の確執」というレベルの問題ではなく、北尾氏の早期の行動は慧眼というほかありません。製造業の金融進出では日本ではソニー、アメリカではGEが有名ですが、こうした企業は親会社の信用力に問題が生じた際の金融子会社のリスクマネジメントというものを、GMのケースから学んで、今から備えておくべきだと私は思います。