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2005年04月27日

「リスク・アービトラージ」ってご存知ですか?

さて、本日は先日いじったイトーヨーカ堂を、別の角度からいじってみたいと思います。イトーヨーカ堂の開示文書によれば、純粋持株会社の下にぶらさがる三社の株式の交換比率は以下の通りになっています。

イトーヨーカ堂 1.2
セブンイレブン 1.0
デニーズ    0.65

さて、本日の三社の株価の終値ですが、以下の通りとなっています。

イトーヨーカ堂 3,600
セブンイレブン 2,955
デニーズ    1,942

ここで、イトーヨーカ堂を基準に、先ほど交換比率をもとにした、理論株価を計算してみましょう。

イトーヨーカ堂 3,600
セブンイレブン 3,000
デニーズ    1,950

株式投資に馴染みの薄い方は、理論株価と本日の終値がほとんど変わりない水準に落ち着いていることに驚くかもしれません。4月21日のエントリーで書いたように、セブンイレブンとデニーズは、総合スーパーという現時点ではあまり魅力的でない業種のイトーヨーカ堂の株と抱き合わせになってしまう埋め合わせとして、交換比率には2社に対して13%のプレミアムが付されていました。つまり、持株会社移行がアナウンスされた時点では、実際の二社の株価はイトーヨーカ堂との比較において、もう少し低いレベルを推移していたわけですが、本日の終値を見ると、既にプレミアムは消失しています。なぜでしょう?
3社の実際の株価が、交換比率にほぼ一致した価格に落ち着いているのは、主に証券会社のトレーダーの仕業で、彼等は外資系証券であれば、Risk Arbitrage(リスク・アービトラージ)あるいはMerger Arbitrage(マージャー・アービトラージ)と呼ばれるチームに属しているはずです。彼等は会社の合併等がアナウンスされると、合併比率と実際の株価の乖離(かいり)に着目し、割安な方を買って割高な方を空売りするという行動に出ます。なぜなら、いずれ正式に合併して合併会社の株式と交換されれば、アナウンスされた比率通りの株式と交換されるわけですから、反対売買をすることにより、益を確定することができるからです。
このようなトレーダーたちは、純粋持株会社に移行することにより、時価総額が上昇するかどうか、などという株価の絶対的な水準には少しも興味はなく、3社の株価の開き具合、すなわちスプレッドのみに着目し、儲けを得ようとする人々です。そして、こういう人々がいるからこそ、3社の株価の開き具合は、ほぼ理論どおりに推移するわけです。
ですから、もしみなさんが現時点で、純粋持株会社移行により、3社の時価総額が上昇すると予想するならば、3社の内どの会社の株を買おうか、ということに神経質になる必要はありません。心配であれば、先ほどのように理論値を計算し、割安なものを買うように心がければ、少しでも安い買い物になります。
こうした取引は、個人投資家の皆さんに魅力的に見えるかもしれませんが、儲けを得ることは難しいでしょう。まず第一に、売買のタイミングが非常に重要となりますから、デイトレーダーのように専業の方でなければ、お仕事がおろそかになってしまいます。第二に、割高な株をカラ売りするための、株を借りてこなければいけませんが、みんな同じようなことを考えているため、品貸料が値上がりして、儲けが吹っ飛んでしまうかもしれません。大きい証券会社であれば、外から借りてこなくても、内部の他のトレーダー(特に先物と現物株のアービトラージトレーダー)が株を持っている可能性があり、そうした場合、会社内部での品貸料をいくらにするかという問題はありますが、外部に品貸料を払うことなく儲けを確定することができるのです。
スプレッドに着目したアービトラージは個人投資家にはまず無理だと私は考えるのですが、時々、本屋で、「個人でもできる裁定取引(アービトラージのことです)!!!」という類のタイトルの本を見かけます。中身は読んでいないのですが、どんな取引を紹介しているのでしょうね???

Posted by Ken Kodama at 2005年04月27日 17:13
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