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2005年05月12日

クレジット・デリバティブと銀行の20年後

大手銀行が貸出リスクを売買する専門部署を相次いで新設したとの報道です。貸出リスクの売買はクレジット・デリバティブと呼ばれる金融商品を通じて行われますが、ご存知ない方も多くいると思われるため、簡単にその商品の概要を見ておくこととしましょう。

【クレジット・デフォルト・スワップとは何なのか?】
まず、用語の整理をしておきましょう。クレジット・デリバティブは信用リスクを原資産とした金融派生商品全般を指す言葉です。具体的にはクレジット・デリバティブにも色々なバリエーションがあり、金融マンのバイブルであるハルの"Options, Futures, & Other Derivatives"の第四版には、「クレジット・デフォルト・スワップ」「トータル・リターン・スワップ」「クレジット・スプレッド・オプション」の3つが紹介されています。その代表格が「クレジット・デフォルト・スワップ」であることは、本日の新聞の記述からもお分かりいただけると思いますが、この商品にフォーカスして話を進めることとしましょう。
「クレジット・デフォルト・スワップ」の詳しい説明は金融大学のサイトをご覧頂きたいのですが、私なりの言葉で一言でいえば、「金融債権が貸し倒れた際に備える保険」です。
1億円を(有)エイムハイ・コンサルティングに融資しているA銀行が、貸倒リスクに敏感になり、貸しはがしするのは可哀想だけど貸出リスクは外だししたいという場合には、クレジット・デフォルト・スワップの売り手であるB証券にα%を支払うことにより、貸倒のリスクを肩代わりしてもらうことになります。もしも(有)エイムハイ・コンサルティングが経営破綻してしまった場合、B証券は1億円をA銀行に対して支払うこととなり、A銀行は貸倒リスクから解放されることになるのです。「会社版の生命保険」というイメージでとらえても、それほど遠くはないでしょう。

【なぜクレデリは儲かるのか?】
2~3年前の金融業界の関係者によれば、「クレデリ(クレジット・デリバティブの略称です)は儲かる」が一般的な認識でした。なぜ、儲かるのでしょう?
その前に、先ほど例に出した、保険料として支払う「α%」について考えてみたいと思います。この「α%」はどういう水準に落ち着くべきなのでしょうか?答えは(有)エイムハイ・コンサルティングのリスク・プレミアムです。銀行の貸出であれ、社債による直接金融であれ、企業の調達金利は、「無リスク金利(国債の利回り) + 各企業のリスクプレミアム」という考え方で決定されます。もし、(有)エイムハイ・コンサルティングが社債を発行していたとすれば、社債市場で観察される(有)エイムハイ・コンサルティングのリスク・プレミアムが、クレジット・デフォルト・スワップの「α%」ということになります。
さて、クレジット・デフォルト・スワップは、生命保険に似ているということを思い出してください。どうして、このような金融商品でリスクを外だししようと考えるかといえば、損失を回避したいからです。クレジット・デフォルト・スワップの本当の対価は「α%」なのに、損失を回避したいという心理的なバイアスが作用し、保険の買い手であるA銀行は、「α%」に上乗せした金額を支払ってしまうものなのです。買い手が理論値より高い値段で買ってくれるために、クレデリのディーラーは大もうけしているのが現状ですが、クレデリの日本市場が厚みを増し、売り手の参加者が増えれば、こうした非合理的なプレミアムはそのうち消失すると思われます。

【20年後、銀行は信用リスクの取り手であり続けるのか?】
さて、このようなクレデリを売買する投資銀行は、日々これらの商品のプライスを出しています。単純に社債市場のプレミアムを引っ張ってきているという部分もありますが、一方で、「クレジット・アナリスト」なる専門家を抱え、財務諸表分析や定性分析等のアプローチで、各企業のクレジット・リスクを日々ウォッチしているところが一般的です。
その一方で、融資を行う日本の銀行に目を向けると、自らの貸出債権を時価評価しているなどというところは、皆無に近いといってよいでしょう。つまり、クレデリを売買する投資銀行の方が、信用リスクを厳しく見て、積極的に信用リスクを取りにいっているのです。本来、信用リスクを取った対価として利息を得ていた銀行は、信用リスクを外だしする方向に進むのであれば、銀行の存在意義とは何なのでしょう?融資実行の際の初期の形式的な審査や事務手続きを行う「窓口」に過ぎないのでしょうか?
新聞の記述によれば、東京三菱銀行で新設された部署は、「クレジット・ポートフォリオ・マネジメント室」なる名前のようですが、どういった方向性を志向するのかといえば、以下の引用をご覧下さい。

(引用始)
『市場売買を通じて突出した特定の業種、地域、グループ向けの貸出リスクを外部に売却する一方、逆に取引の薄い業種・地域向けのリスクを調達すれば、全体の貸出資産の構成やリスクを均衡のとれた中身に組み替えることができる。』
(引用終)

上記の記述にしたがって、銀行が貸出ポートフォリオを整えていくと、いわゆる貸出市場全体に連動してくるようなポートフォリオ像に近づいていくことでしょう。すなわち、信用リスク全体のインデックスに連動したパッシブ運用のポートフォリオが形成されていくはずです。その一方で積極的にリスクを取る投資銀行は信用リスクのアクティブ運用者とみることができます。パッシブVSアクティブのどちらが良いのかという議論は古くからありますが、パッシブを選択するにしても、銀行自らが貸出債権を時価評価する覚悟で信用リスクに積極的に対峙しないことには、旨味のあるプレミアムがまたしても「外資系」に流出してしまうことになります。
クレデリとどう対峙するのか・・・銀行の哲学が問われていると私は思います。

(今日は神が舞い降りてきたかのように、短時間で(45分くらい)納得のいくコンテンツを書き上げることができました!日々のコンテンツレベルのバラつきはどうかご容赦下さい(^^ゞ)

Posted by Ken Kodama at 2005年05月12日 10:32
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