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2005年05月13日

日米の「リタイアメント」の温度差

アメリカの企業年金の財政悪化が深刻であるという報道が本日の日経新聞でありました。私の正直な感想は、「意外」です。日本でも、まだまだこれからこの問題で苦境に陥る企業は出るかもしれませんが、「企業」年金問題に関しては(「公的」年金はまだまだ危ういですが)、法整備・会計基準の整備や各企業の努力により、かなりメスが入ったという気がしていました。さらに、先日の報道では、日産が隠れ年金債務を計上するうんぬんという次元を飛び越えて、年金債務を現金拠出により、前倒しで処理するという積極的な策が報じられました。キャッシュリッチ企業が日産の動きを追随し、こうした報道がしばらくはあるのかなーと思っていたところに、アメリカでのこの報道です。
私が「意外」であると感じるのは、日本が企業年金問題の解決策として採用した、運用リスクを企業から従業員に転嫁する「確定拠出年金(日本版401k)」は、アメリカが本家本元であるからで、企業が運用リスクを負うタイプの「確定給付年金」がこれほど多く残存しているとは思っていなかったからです。本日の新聞報道によれば、アメリカで401kへの移行が進んでいない理由として「強い労働組合」の存在が指摘されていますが、確かにアメリカは「自らの権利は戦って勝ち取り守り抜くもの」という思想が根付いている国であるため、そう考えると確定給付企業年金が多く残存していることはうなづけます。一方で、確定拠出年金への移行がこれほど急速に進んだ日本は、労働者が自らの権利を強く主張しなかった結果(あるいはよく分からないまま会社の文書にサインしてしまった結果)であるといえるでしょう。
さて、では日本はアメリカに比べてリタイアメントの問題において先進国であるのかといえば、それは大間違いです。自らの権利意識の薄い労働者のおかげで、日本は企業から運用リスクを外出しにすることは成功したものの、その結果個人が自己責任で負うこととなってしまった運用リスクについては、実質的になにも手がつけられていないといっていいでしょう。老後の生活を心配する堅実な方の多くは、その資産の大半を運用リスクの小さい預貯金で運用しますが、そのような方は、実は自らが大きなインフレリスクにさらされていることに全く気がついていません。また、そうした個人を導くべきであるファイナンシャル・プランナーの方々も、税や保険が専門である方が多いために、必ずしも資産運用の問題に明るい方が多くないという事情もあります。
対して、個人の資産運用という分野においては、アメリカがはるかに先を行っており、「Wealth Management」という考えの下で、ポートフォリオ理論、アセットアロケーション、効率的市場仮説、行動ファイナンス・・・といった科学的な手法により、個人の資産運用という問題が体系化されつつあり、かつそれらの理論体系に基づいた助言が実践されています。つまり、個々人のレベルで見れば、アメリカでは、確定給付年金があれば労働組合を通して強く権利の存続を主張し、確定拠出年金になってしまったのであれば、ファイナンシャルプランナーを活用して自らの人生設計に合致したリスクを積極的にとりにいっており、日本のはるか先を行っているのです。日本のサラリーマンは、まず、自分に運用リスクが転嫁されたのだという、その事実にまず気づくところから始めねばならないでしょう。

Posted by Ken Kodama at 2005年05月13日 10:34
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