久々に日銀ネタです。企業経営に関する記事はつぶさに読むのに、経済ネタとなると一瞥もしない方も結構いるのではないのでしょうか?そうした方を対象に、日経新聞を余すところなく読み取っていただけるよう、本日は「分かりやすい解説」というスタンスでエントリーを書いてみたいと思います。
まず、NIKKEI NETより記事を引用することといたしましょう。
(引用始)
『日銀は20日の金融政策決定会合で、金融の量的緩和の目安としている日銀当座預金の残高について、誘導目標の下限としてきた30兆円を一時的に下回ることを容認すると賛成多数で決めた。金融不安の後退で金融機関が手元に余分な資金を置かなくなり、目標達成に向けた資金供給が難しくなっているためで、4年間にわたる量的緩和政策のもとで初めて目標割れを認める。ただ目標水準そのものの引き下げは見送り、現行の量的緩和の枠組みは堅持する。』
(引用終)
もし、上記の文章が皆様の眠気を誘ったとしたら、執筆者の力量を疑う前に、恐らく「量的緩和」と「日銀当座預金残高」の意味を調べることが先決事項でしょう。これらの意味が分からないと、恐らく一歩も先には進めません。
「量的緩和」の意味については、以下の昨年7月に執筆した私の過去のエントリーをご参照下さい。
自画自賛になってしまいますが、このエントリーは今読み返してみても、自分で感動するほど分かりやすいです。原点に立ち返って、こうした分かりやすいエントリーの執筆を志したいものです。
【日銀当座預金残高とは?】
この辺の用語が分かりにくくなるのは、この当座預金が日銀のものなのか、民間金融機関のものなのか、といったものが曖昧に記憶されてしまうからでしょう。
正解はといえば、日銀当座預金残高とは、一般の金融機関が日銀に開設している当座預金の残高をいいます。ですから、この残高が増えるということは、民間の銀行のB/S上で「現預金」の勘定の残高が増えることを意味します。では、この残高をどうやって増やすかといえば、それが買いオペなる手法によってです。つまり、民間の金融機関の債券や手形といった他の資産を買い取ってあげて、そのかわりに現金を渡すのです。こうすることによって、民間に出回る現金の量が増えるので、「量的緩和」と呼んでいるのです。
【なぜ誘導目標残高を下回ることを容認するのか】
さて、日銀は「日銀当座預金残高」の目標を30兆円と掲げた政策を一貫してきたわけですが、ここでこの目標残高を下回ることを容認したわけです。なぜでしょう?この理由として、日経新聞の記述を引用しておきましょう。
(引用始)
『金融不安の後退により金融機関が手元に余分な資金を置こうとしなくなったためで、日銀は目標下限の三十兆円を維持するのが難しくなっている。』
(引用終)
現金が他の資産と比べて、最も収益を産まない資産であるというのは、銀行とて同じことです。「金融不安」という銀行の信用面での不安材料が後退したことから、銀行は自らの収益性のことを優先的に考え始め、結果として日銀の買いオペに応じるメリットがなくなってしまったのです。民間の金融機関が買いオペに応じないならば、民間に資金の供給をすることは難しいですから、「目標残高の下割れ」を容認せざるを得なかったのです。
【では、なぜ目標残高自体を下方修正しなかったのか?】
さて、目標残高の三十兆円を一時的に下回る事態となったわけですが、それならば、なぜ目標残高自体を、例えば二十兆円といった具合に下方修正しなかったのでしょうか?どちらであっても、実際の残高が三十兆円を下回っていることに変わりはないじゃありませんか???
この言い回しこそが、我が日本の中央銀行総裁の「話術」なのでしょう。「目標残高を下方修正」といってしまうと、「金融引き締め」の色合いが強くなり、そうすると7月のエントリーに書いたように長期金利が上昇し、場合によっては株価に影響を与え、実質的な景気にも影響を与えかねません。「目標は維持しつつも一時的には容認」という話術が、金融引き締めの色彩をやわらげる上で有効だと福井総裁は考えたのでしょう。