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2005年06月14日

証券取引所の「自主規制」を考える

東京証券取引所は13日、上場審査などの自主規制機能の分離を求める金融庁に対して、分離を否定する報告書を提出したとの報道です。本日の日経新聞では、多くの関連記事が紙面を占拠していますが、分からない方には、何が問題なのかぴんとこないのではないでしょうか?もし何が議論になっているのか分からない方がいるとすれば、それは恐らく「自主規制」の意味が分からないからでしょう。そこで、東証が取りまとめた自主規制に関する報告書を手がかりに、この問題を考えてみたいと思います。

証券取引所の自主規制に関する研究会中間報告書(サマリー)

証券取引所の自主規制に関する研究会中間報告書

まず、「自主規制」という言葉の定義を報告書より引用しておくこととしましょう。

(引用始)
『一般に自主規制とは、同業者同士または同業者から構成される団体などが一定の目的を達するため、その構成メンバーに対し、財やサービスの提供などについて一定のルールを定めその遵守を求めることを指すと考える。』
(引用終)

まあ、少し小難しい文章ですが、自主規制とは法律による規制ではなく、同業者団体が自主的に定めるルールなのだといえるでしょう。では、何を目的としたルールなのかといえば、同報告書によれば、自主規制の目的については、3つの考え方があるとしています。

(引用始)
『①有価証券の売買等の公正・円滑の確保及び投資者保護
②公益又は投資者保護
③国民経済の適切な運営及び投資者保護』
(引用終)

この3つの考え方を論じだすとこのブログの手には負えなくなりますが、どのような考え方であっても、投資者保護が最重要の目的であると考えてよいでしょう。
さて、ではなぜ法律による規制だけではなく自主規制も併せておくべきなのか、といえば、それは『証券市場の特性を踏まえたいわゆる現場主義による機動的かつ実効性の高い規制が期待されたことによる(引用、強調は私)』と同報告書は述べています。
・・・本当に自主規制は、今まで「機動的かつ実効性が高」かったのでしょうか?大幅な株式分割による株価の歪みについては、随分前から指摘されていたことですが、証券業界がようやく重い腰をあげたのは、今年3月になってからのことです。詳しくは下のエントリーをご参照下さい。

新株売買翌日に VS 神業を持つオバチャン

なぜ、この時点でようやく証券各社が重い腰を上げたのかといえば、この問題が証券各社の重要顧客である大企業を悩ませ始めたからです。そう、ホリエモンが大掛かりな敵対的買収を仕掛けるまでの資金力を得たおおもとをたどれば、そこには大幅な株式分割による錬金術が重要な役割を果たしていたため、はじめて証券各社は重い腰をあげて自主規制に動いたのです。それまでも、大幅な株式分割で泣かされた個人投資家は多くいましたが、個人投資家は証券各社にとって重要でない、というのは言いすぎであるものの、モノ言わぬ顧客なので、自主規制に動かなかったわけです。
また、上記の証券各社による自主規制の数日前に、東証は東証でなんともぼんやりとした自主規制を打ち出しています。詳しくは、下記のエントリーをご参照下さい。

大幅株式分割に指針

規制当局、証券取引所、証券業協会、とルール作りの団体が3つもあることから、「どこかがルール作りに腰をあげてくれるだろう」的な押し付け合いの空気があることも否めないでしょう。
証券取引所と証券業界の自主規制をごちゃまぜにしましたが、いずれもこれまで決して機動的ではなく、またそれは「投資者保護」というよりは、より多くのお金を落としてくれる「資金調達者保護」の色合いが強かったわけです。東証が上場をすれば、新たな問題が発生する、というのではなく、利益追求の姿勢が今までより「鮮明」になり、直接の顧客である「資金調達者」よりの姿勢が更に明確になることが予想される、ということです。
では、どうすべきなのか?私の個人的な意見は、日本では自主規制には期待せず、理想的には、ルール作り関しては問題意識の最も高いと思われる金融庁に一本化していくべきだと思います。(かなり異端な意見ではあるとは思いますが)ルールを作るには、その根底に「なにがよくてなにがいけない」の価値判断、すなわち、モラルが必要とされますが、国民の大半が信仰を持たない日本においては、キリスト教国であるアメリカと比較すると、土壌となるモラルの欠落が著しいといえます。文化的背景から考えれば、わが国にはそもそも、「自主規制」は期待しにくい、というのが私の考えです。
まあ、前段落はかなり異端、かつ、過激な意見であることは承知なので、皆様に同調を求めることはしませんが、自主規制が目指す「投資者保護」の「投資者」とは、我々一人一人のことです。この問題に対する感心が、当ブログにより少しでも高まれば嬉しい限りです。

Posted by Ken Kodama at 2005年06月14日 10:50
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