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2005年06月27日

買収防衛とコーポレート・ガバナンス

厚生年金基金連合会が、今年6月の株主総会で提案された買収防衛策の9割強に反対していることがわかったとの報道です。具体的には授権資本枠(発行可能な株式の上限の数)の拡大に反対しているわけですが、授権資本枠を拡大しただけでは、あくまでも「発行枠」が拡大しただけで実際に株数が増えるわけではないので、即、希薄化により株主価値が低下してしまうわけではありません。
では、どこで歯止めがかかるかといえば、取締役会です。新株を発行する場合には、取締役会の決議を要しますが、厚生年金基金連合会が授権資本枠の拡大に反対するということは、取締役会が株主利益の代弁者として機能していないと見ていることの現われであるともいえます。
では、なぜ日本の上場企業の取締役会が株主利益の代弁者として機能していないかといえば、社外取締役がほとんどいないからです。会社法で取締役がどう規定されていようと、所詮、社長をピラミッドとするヒエラルキーの中でがんじがらめの人々ばかりなのですから、株主利益と経営陣の利益が対立する場面が生じたならば、当然経営陣の利益の肩を持つわけです。
では、なぜ日本の上場企業には社外取締役が少ないのか?その点について、本日の日経新聞16ページではそうそうたる面々を集めて、紙上討論を実施し、冒頭の報道の中心人物である厚生年金基金連合会専務理事の矢野氏も討論メンバーに加わっていました。
興味深いのは「カリスマ経営者」と称される京セラ稲盛氏とユニクロ柳井氏の二人が、社外取締役そして取締役会の意義をよく理解していないという点です。このお二人は、企業経営の神様で、企業に莫大な利益をもたらしたという強烈な成功体験を持っているという点で共通しています。確かに企業に多くの利益をもたらすことが、株主の利益につながりますが、株主の利益を考えるにあたっては、利益の全体額ではなく、1株あたり利益で考える必要があります。株式交換により積極的にM&Aを推進する企業は容易に利益の金額を増やすことができますが、1株あたりの利益で見ると必ずしも株主利益の増加につながっていないケースも多くあります。このお二人のもたらした利益の増加は、希薄化のインパクトを無視しうるほど強烈なものであったため、企業の利益さえ考えていれば株主の利益につながったのでしょうが、それ以外の大多数のフツーの会社は、両者を峻別して考えることが重要です。
また、稲盛氏は『仮に月1回、1~2時間程度の取締役会に出席してもらったところで何も分からない。(引用)』といい、柳井氏は『(社外取締役の)人材が豊富とは思わない。成功した経営者が最も適任だろうが、・・・(引用)』と言いますが、私はこのような考え方は取締役会そのものの意義を理解していない現われだと思います。もし、社外取締役に分からない議論が取締役会で行われていたとしたら、それは(1)そもそも議題が細かいところに入りすぎでいるか、(2)経営陣の説明能力の不足を疑ってかかるべきでしょう。バフェットは投資対象の企業の社外取締役を多く務めましたが、彼自身、優れた経営者ではなく、優れた投資家にすぎなかったという点を忘れてはならないでしょう。
種を明かすと(ここが私がお人よしたる所以ですが・・・)、本日のエントリーは、先日読んだ日経ビジネス人文庫の『最強の投資家 バフェット』にかなり影響されています。著者は、あの日経新聞の激辛論説委員牧野洋氏で、バフェットの人となりやバリュー株の発掘法だけでなく、当エントリーのテーマであるガバナンスを考える上で、実によい著書ですので、お時間のある方は是非読んでみて下さい。

Posted by Ken Kodama at 2005年06月27日 21:42
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