本日の日経新聞の企業総合面では、株主総会で優先株の消却の提案が相次いでいる状況について報じられていました。優先株とは、なにが「優先」なのかといえば、配当の支払いや残余財産の分配において、普通株に対して優先的に取り扱われる株式のことです。その代償として議決権が制限されていることが一般的です。・・・と、ここまでが「優先株」で検索して出てくるサイト上の一般的な説明です。では、どのような企業が優先株を使って資金調達を行うのでしょうか?
本日の日経新聞11ページを見ると、「優先株の発行残高が大きい企業」のランキングが掲載されており、1位双日を筆頭に2位三菱自動車と続いており、言葉は悪いですが、瀕死の企業、あるいはかつて瀕死の状態であった企業が多く目につきます。瀕死の企業は損失続きで、自己資本が極端に細っていることが一般的で、何がなんでも早急に自己資本を積みますことが必要となります。
利益の出ない企業が自己資本を積みますには、増資するしか手立てはありません。しかし、瀕死の企業の増資にそのまま応じるというのは、かなり度胸のいる行為ですし、投資先の企業が万一つぶれてしまった場合、業績が悪化していくのを漫然と見過ごしていた既存株主と同じ取り扱いを受けるのも面白くありません。そこで、登場するのが優先株で、配当の支払いや残余財産の分配において普通株式より優先的な取扱を受けるということは、投資家側から見れば優先株は普通株式よりもリスクが小さいということです。普通株式とリスクの大きさを変えてやることで、リスクの大きい企業へ資金が回ることになり、これが優先株の意義であるといえるでしょう。
本日の日経新聞のランキングに掲載されている企業は成熟段階の企業ばかりですが、リスクが高いという点でいえば、ベンチャー企業も同じです。そこで、ベンチャーキャピタルがベンチャー企業への投資において使用するのが、やはり優先株です。創業者と同じ大きさのリスクは負いたくないけど、でもベンチャー企業に投資したいという場合に、優先株を使用して、よりリスクを抑えた投資を行うことが可能になるのです。詳しい点は、下記のサイトを参照にしてください。
さて、そんなメリットのある優先株ですが、本日の報道は、その優先株を買い戻して償却してしまう動きについてです。なぜに、かくも役にたった優先株は消却されてしまう運命にあるのでしょうか?まず、簡単に分かる理由としては、優先的な配当の支払いをしているわけですから、配当の支払いの負担が重い、ということです。買い戻して償却すれば、毎年の配当の支払いの負担はなくなります。
また、より重要なポイントは、優先株主の利益と普通株主の利益は対立するということです。優先株主はとにかく配当が欲しいわけですが、企業が瀕死の状態を脱すると、今度は攻めの経営に転じるために、キャッシュを企業の中に蓄えて投資を行うことが必要となってきます。したがって、普通株主は優先株主に毎年毎年莫大な配当が支払われるのが面白くなくなってくるわけです。したがって、過度な優先株残高を持つ企業が一度危機的な状況を脱すると、本日の新聞報道のように償却の運命を見るわけなのです。つらいときに頼られて、羽振りがよくなってくると邪魔にされる・・・なんだか放蕩息子を抱えた親の心境になってしまいます。