本日、ようやく新会社法が成立するとのことで、日経新聞は6,7ページに特集を組んでいます。この見開きを見て改めて思うのは、会社法が対象とする会社の多様性です。左のページの毒薬条項は、株式を上場している大規模な会社にしか関係のない世界です。対して、右のページの合同会社は、上場よりはるか手前にあるか、あるいはそもそも上場の意図がない小規模な会社を対象にしたものです。
さて、本日着目するのはデット・エクイティ・スワップがらみの改正です。日経新聞の記述を引用すれば、改正のポイントは以下の通りです。
(引用始)
『今後は弁済しなければならない価格が決まっている債権で出資額がその額を下回っているときは検査役の調査がいらなくなる。(中略)
条件を満たせば債権者と債務者の合意だけでできるようになり、財務改善の機動性が増す。』
(引用終)
上記の改正により、債務を株式にかえてしまうデット・エクイティ・スワップは行いやすくなるわけですが、では、これは大きい会社と中小企業のどちらを想定した改正であるかといえば、実は両方です。
大企業のデット・エクイティ・スワップといえば、例えば当サイトの過去のエントリーである『いまさら人に聞けない「デット・エクイティ・スワップ」の疑問』でとりあげたミサワホームHDなどの実例を我々は見てきました。では、中小企業とデット・エクイティ・スワップの関わりについていえば、それは金融庁から発表された、以下のリレバン関連の文書に見出すことができます。
上記ファイルの22ページ目に「資本と融資の分離」と題したセクションがあり、そこで中小企業金融において『デット・エクイティ・スワップの手法を有効に活用していくことが適当なケースもあるものと考えられる』と述べられています。ではどういう場合にデット・エクイティ・スワップが適当であるのかといえば、中小企業の借入金においては、返済時期が近づくと借り換えでまた借り直し、あたかも根雪のように借入金として残り続ける長期固定的な借入金というものがしばしば存在します。そんな借入金は、借入金ではなくて実質的には資本なのではないかと、この文書は言っているのです。実質的に資本ならば、デット・エクイティ・スワップで銀行の債権を株式にかえてしまいましょう、ということなのです。
ここで思い出していただきたいのは、かつて吹き荒れた貸し渋り・貸しはがしの嵐です。その大元には金融検査マニュアルの存在がありました。つまり、金融庁の指導は遅かれ早かれ現実のものとなるわけです。デット・エクイティ・スワップについても、新会社法で検査役の調査が緩和されるわけですから、翌年から、中小企業の株主として銀行が登場する事態が増加することも想定しておかねばならないでしょう。
「銀行」が株式を保有することは、本来的に望ましくないことです。ですから、同文書では、デット・エクイティ・スワップにより取得した株式は、将来的に投資ファンド等へ売却する青写真についても言及があります。ということは、株主総会で村上ファンドのような手ごわい株主に経営者がつきあげられる構図は、大企業だけのものではない、という可能性もあるのです。そして、そうした手ごわい株主に対して計算書類の説明責任を負う担い手として期待されているのが「会計参与」なのです。
デット・エクイティ・スワップのケースを見て分かるように、新会社法は法の条文だけを追いかけていたのでは見えないことが多くあります。横断的に様々な施策や社会の実態を理解することが、法の理解につながるのでしょう。