本日は新聞休刊日のため先週の木曜日の日経金融新聞をネタにさせていただきます。先週の水曜日に「ニッセイ/パトナム・インカムオープン」というファンドを当サイトでとりあげましたが、偶然にも、その翌日の日経金融新聞では、大和総研資産運用戦略部長の松原英人氏による『毎月分配型の問題点』と題するコラムが掲載されました。タイトルが「毎月分配型」と決め打ちしていることから、私が取り上げた「ニッセイ/パトナム・インカムオープン」とは異なるファンドが念頭にあるのではないかと思うのですが、氏の問題意識と私の問題意識は同根にあると思います。
どのようなファンドであれ、そのファンドの仕組みを承知の上で購入しているのであれば、全く問題ないのですが、グロソブやパトナム・インカムほどに人気が出てくると、「人気があるからいいファンドなんだろう」という理由だけで購入するDQN投資家の方もかなりいることと思います。私も社会人1年生の頃は、「あのファンドいいらしいよ」という根拠のない口コミを信じるDQN投資家でした。これだけ人気になった「毎月分配型ファンド」を購入しようと考えている人は多くいると考えられ、そうした方に一歩踏みとどまって判断の支援材料にしていただくべく、本日のエントリーを執筆したいと思います。毎月分配型ファンドを購入するにあたってのチェックポイントを以下に記しておきたいと思います。
【①あなたのライフステージと合致しているのか?】
一般的にいえば、グロソブは多少ゆとりのあるシニア層に適した商品だと思います。比較的リスクを抑えた運用をしながら、毎月のファンドの儲けに関わらず安定した分配金を出してくれて、年金の足しになるからです。これは裏返せば、現在若い方で将来の老後資金の形成のために運用を検討している人にとっては、グロソブは適していないということです。なぜなら、より高いリターンの株式は一切組み入れられていませんし、毎月の分配金を再投資に回さないで現金で受け取っていたのでは、複利運用の恩恵に与ることができず、資産の増え方が少なくなってしまうからです。ライフステージやリスク許容度といった観点から、投資家本人にマッチしている商品であるのかどうかを、まず検討する必要があります。
【②分配金の額はファンドの儲けに対して適切に設定されているか?】
いわゆる、「毎月分配型」と呼ばれるファンドの分配金は毎月ほぼ同額の安定した額に設定されていることが多いですが、これは分配金の原資となるファンドの儲け自体が安定していることを意味するのではありません。ですから、分配金の原資となるファンドの儲けと、分配金の大小のチェックを行ってみることは有意義です。
一般に投資の収益は配当や利息収入等のインカム・ゲインと売買益のキャピタル・ゲインの2者から構成され、ファンドとてそれは同じことです。ただし、ファンドの投資家の儲けを考える場合、ファンドの運用を行う人への報酬である信託報酬を差し引いて考えねばなりません。
これらの情報はファンドの運用報告書から入手することが可能です。以下に2つのファンドの運用報告書のリンク先を掲載しておきます。
グロソブの儲けと分配金の情報は、運用報告書の23ページに過去6ヶ月分の情報が記載されています。過去6ヶ月の儲け(配当等収益 + 有価証券売買損益 -信託報酬等)の合計額は、約815億円であるのに対して、分配金の合計額は1,165億円で、儲けより分配金が多い状態です。ということは、過去6ヶ月に限定してみれば、分配金の約70%の部分のみしか、儲けに裏付けられていない、ということができます。
パトナム・インカムの同様の情報は運用報告書の33ページに記載されています。3ヶ月決算型のため2期間の情報しかありませんが、2期間の儲けの合計額は約△89億円で損失ですが、分配金の合計額の方は約232億円で、過去2期間に限定すればファンドの儲けという裏づけがないのに分配金が支払われているということができます。
【③分配金が過大である場合、過去の蓄えの裏づけがあるか?】
②で見たように、ファンドの儲けを上回る分配金が支払われている場合は、その分配金の原資として過去の儲けの蓄えがあるか否かをチェックしてみる必要があり、それはファンドの貸借対照表によりチェックできます。
グロソブの運用報告書の31ページにはファンドの貸借対照表があり、第26期末の繰越損益金は約8,717億円であり、さきほどファンドの儲けに対して過大であった分配金は、過去の儲けの蓄積の取り崩しであると考えることができ、これは健全な姿です。
ところがパトナム・インカムの運用報告書の35ページを見ると貸借対照表には繰越損失が計上されており、過去の蓄えの裏づけもないことから、同ファンドの分配金は完全な元本の取り崩しである、ということができます。
では、なぜ期間の儲けの裏づけもなく、過去の蓄えの裏づけもない状況で分配金を支払うことができるのか、ということが日経金融新聞のコラムに書かれているのですが、これはファンド計理の仕組みに深く関わることで、私の筆力で分かりやすく噛み砕くことは不可能なので省略させていただきます。興味のある方は、金融新聞のバックナンバーをおとりよせ下さい。
現在儲けがでておらず、過去の儲けの蓄積もなく、ただ元本を取り崩して分配金を支払い、かつ信託報酬まで取られるファンドが人気ファンドであるならば、それは表面的な分配金の金額に幻惑されている可能性が大きいと言わざるを得ません。今年のボーナスは概ね好調のようですので、資金運用のためのファンド選びにはくれぐれも慎重な判断をお願いしたいものです。