せっかくの、退院後の初の営業日の日経新聞のトップは『電力の相互融通』という、あまり私好みではない報道。しかし、異なる角度から焦点を当てれば、これもまた興味深い動きではある。
記事を要約すれば、電力小売の新規参入組が、日本卸電力取引所という余剰電力の売買の市場がありながら、相対契約の相互有通により、電力の過不足を調整しようという動きに関する報道である。こうした相対契約の相互融通の狙いはコストの削減にあるようだが、では、果たして、マクロの社会的な視点から見た場合、取引所を通すより相対契約の方が望ましいのだろうか?
マーケティングの領域では卸売業者の社会的な機能について考えており、その一つに取引総数極小の原理なる理論が存在する。ここで製造業者の数を3、小売業者の数を4としてみよう。もし、世の中に卸売業者なるものが存在しなければ、3つの製造業者それぞれが4つの小売業者にコンタクトせねばならず、取引の総数は「3×4=12」となる。ところが間に1社の卸売業者を介在させることにより、製造業者も小売業者も皆卸売り業者1社と取引を行えばよいため、取引の総数は「3+4=7」となる。卸売業者がいなければ取引の総数は掛け算になり、卸売業者が介在すれば取引総数は足し算ですみ、社会的な取引の総数は激減するのである。
(取引総数極小の原理を分かりやすく図示したものについては、こちらのサイトをご参照下さい。)
「相対契約の相互融通」は上述の理論とは明らかに逆行したものであり、社会的には望ましくない動きであるはずだが、それでも本日の日経新聞報道によれば、ミクロ的にはコスト削減につながっているという。このギャップの原因は、『新規事業者の総発電能力は約170万キロワットと、電力10社の0.8%にすぎない(本日の日経新聞より引用)』という、ボリュームの過少によるものであろう。加えて、電力は送電の過程で減衰するため、北海道の余剰電力を九州で消費することは実質的に不可能である。
また、ここからは私の全く根拠なき「憶測」だが、余剰電力の売買において電力会社系と新規参入組の対立があるのかもしれない。日経新聞1面の表にやたらと登場するのは「丸紅」の名前であるが、同社は日本卸電力取引所の社員としても名前を連ねている。恐らくは電力会社主導の日本卸電力取引所の動きに、丸紅が反旗を翻したのかもしれないが、重ねて断っておくが、これはあくまでも憶測。
しかし、この日本卸電力取引所のサイトには、恐ろしいまでにやる気が感じられない。こんな調子だと、電力仲介は丸紅に牛耳られてしまいますよ!