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2005年07月26日

ワールドの上場廃止を考える

アパレルのワールドがMBO(Management Buy Out)により株式を非公開化するとの報道である。必ずしも買収防衛が目的ではないと寺井社長は述べているが、仮にこのMBOが買収防衛目的であったのなら、会社法とにらめっこした小手先だけの株式分割や新株発行権の付与といった防衛策と異なり堂々としたもので、私好みではある。本日の日経金融新聞でも「上場の意味に一石」との見出しで、牧野洋氏が興味深い論説を書いているが、日経新聞、日経金融新聞にはない視点から、この問題を考えてみたい。

①ビジネスリスクと財務リスクのダブルパンチ
まず、このMBOの先にある戦略だが、日経新聞3ページの見出しにあるようにワールドが目指すものは製販一貫であり、すなわちユニクロやギャップと同じくSPAを志向している点に留意すべきである。販売に加えて製造も担うとなると、そのための固定資産の増加、ならびに在庫の増加が容易に予測され、SPAとは高い利益率が期待できる業態である半面、同時にビジネスリスクが高い戦略であることにも留意せねばならない。
加えて借入によるMBOは、日経金融新聞の牧野氏の言葉を引用すれば、『大雑把に言えば、株式時価総額の相当な部分が有利子負債に切り替わる(引用)』ことを意味する。したがって、ビジネスリスクのみならず、財務リスクも同時に高まることを意味しているのである。またMBOのための借入金は株式取得のために使われるのであって、生産設備を有する企業を買収するとなると新たな買収資金が必要となり、エクイティによる調達が困難となった後では、さらに財務レバレッジは高くなることも予想される。高まる両リスクを認識しているのか、またそれをマネージできるのか、寺井氏の手腕が問われるところである。

②ブランド戦略とSPA
また、ワールドがSPAを推し進めたとして、ギャップやユニクロほどの粗利益率の高い体質を獲得できるかも疑問である。
ファーストリテイリングは実質的にユニクロのワンブランドであり、ギャップはバナリパ、ギャップ、ネイビーの3ブランドとブランド数が少ないからこそ、SPAにより規模の経済の恩恵を十二分に享受することができる。対して、ワールドは同社のサイトを見れば一目瞭然であるが、「ブランド検索」なる画面を設けねばならぬほどの有様である。そして、これらのブランドの内、国際的に展開しているブランドは存在するのであろうか?ギャップはどかんと作って、それをアメリカ、日本、イギリス、フランス・・・といった国で売りさばくのであるから、SPA戦略により得られるメリットは桁違いである。こうした戦略面のボタンの掛け違いも気になるところではある。

③負債は「節度」が肝要
『企業価値イコール株主価値と当初は考えていた。しかし、成長戦略を歩む過程で、それに違和感を持つようになった。(引用)』

上記は日経新聞11ページより引用した寺井氏の言葉であり、「企業価値 = 負債価値 + 株主価値」という基本的な等式の深い理解に基づく発言であり、ライブドア騒動の際に企業価値と株主価値を混同した多くの論者とは一線を画しており、今回のMBOの決断は寺井氏が周到に熟考した後のものであったことがうかがえる。とはいえ、やはり財務構成はバランスが肝要で過度な負債は戒めねばならない。
2005年3月末のワールドの総資産は約2,000億円であり、1,700億円という金額を財務構成の変化のためのみに借り入れる(500億円は優先株)というのは、私には「節度」ある水準とは思えない。

④非公開企業であるがゆえに身を滅ぼした人といえば・・・
西武の堤氏は非公開企業であったがゆえに、マネジメントを誤り身を滅ぼした。詳しくは下記の過去エントリーを参照されたい。

公開企業 VS 同族経営 西武問題

非公開企業は相続税の軽減のために企業価値を減ずる策を講じるものだが、この策も行き過ぎると倒産の憂き目を見ることは西武問題で見たとおりである。

確かに株式の非公開は一つの選択肢ではあるが、様々な角度から検証しても、今回のワールドの場合はかなりリスキーな選択であったと言わざるを得ない。寺井氏の頭の中にある成長戦略が合理的であるか、そして、株主という外部からの規律を失った後も着実に戦略を実行できるかに、ワールドの未来は託されている。

Posted by Ken Kodama at 2005年07月26日 10:39
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