本日の日経金融新聞の一面には『長者囲い込み 群雄競う』とのタイトルで、富裕層の資産運用ビジネスについての記事が掲載されていました。そこで幾度となく登場するキーワードが、マス・アフルーエントという言葉です。このマス・アフルーエントという言葉はマーケティング用語ですが、どのような文脈で登場したかを知るためには、マーケティングの歴史を振り返る必要があります。
かつて、マーケティングなる学問が登場する以前のマーケティングは、いわゆるマス・マーケティングでした。すなわち、顧客のことよりも、まず売りたい商品が先にありきで、その商品を売るためにTVのCMなどを活用した画一的なマーケティングがマス・マーケティングだったのです。ところが、だんだんとモノがあふれ出してくると画一的なマス・マーケティングは通用しなくなり、顧客層のセグメンテーションを行うようになり、遂には究極のセグメンテーションであるワン・トゥ・ワン・マーケティングが誕生したわけです。
確かにワン・トゥ・ワン・マーケティングは顧客にフォーカスした理想的なマーケティング手法であるものの、ネックとなるのはIT投資を中心としたコストです。そこで主に費用対効果の視点から、マーケティングの流行は1対1からマス・マーケティングへと揺り戻しの現象が起きているのです。ただし、このマス・マーケティングは以前のマス・マーケティングとは異なり、ターゲットとするのは主に富裕層であり、この富裕層を対象にするマス・マーケティングをマス・アフルエンス・マーケティングと呼ぶのです。そして、このマス・アフルエンス・マーケティングが金融ビジネスにも取り入れられはじめてきたのです。
まず、このマス・アフルエンス・マーケティングを資産運用に採り入れることの意義ですが、資産運用においてはどのような形態であれマス・マーケティングは望ましくないというのが私の考えです。同じ一億円の金融資産を持っている人でも、その人の価値観、リスク許容度、知的好奇心、お金を手にした経緯(相続なのかビジネスなのか)、年齢、職業・・・などによって資産運用のプランは十人十色となるはずだからです。お金という無色透明のものであっても、その人の人生に即したオンリーワンのプランでなければなく、一人一人のニーズを満たしたワン・トゥ・ワンのアプローチが必要となります。恐らくは良識ある金融機関(があればですが)は、当然こうしたことを理解しているはずで、「マス・アフルーエント」というのはマーケティング手法というよりは顧客の選別の基準という意味合いしかもっていないはずです。
では、具体的にはその選別の基準がどうなっているのかといえば、本日の日経金融新聞では、マス・アフルーエント層を純金融資産1億円以上5億円未満、そして5億円以上をスーパーリッチと定義しています。もちろん、このサイトに訪れていただいている人がどのような方かは検討もつきませんが、これらの層に属する方はほとんどいないのではないでしょうか?それで、取り残された方の資産運用はどうなるのかと言えば、マネー・リテラシーのある方であれば絶対に相手にしないような金融商品へとつぎこまれているのです。これは決して誇大な表現ではなく、「ありえない」金融商品が人気を博している状況を幾度となく当ブログで批判してきました。
マス・アフルーエンス・マーケティングから取り残されてしまった人の資産運用はどうすればよいのか?本来であれば私のような独立のFPが受け皿となるはずですが、独立FPとてボランティアではないわけですから、作成したプランに対して適性な報酬が支払われないとビジネスにならないわけです。しかし、プランに対してフィーを支払うことに理解を示してくれる方というのは、マス・アフルーエント・マーケティングから取りこぼされてしまった方にはごくわずかであるというのも事実なのです。どうしたもんですかね~、という歯切れの悪い終わり方で本日は失礼します(汗)。