ドーキンスの手のよる『利己的な遺伝子』という著作の概要を知ったのは私が大学に入った頃。我々人間とは、実はDNAが複製を続けるための乗り物にすぎず、人間ではなくDNAこそが実は主役だと考え方が存在するということを知ったとき、私は興奮したものだった。
それから、期を前後して知ることとなる「テレビ局の儲かる仕組み」。『8時だよ全員集合!』も『笑っていいとも』も、実はテレビ局の広告収入を高めるための手段にすぎないということを知ったときも、随分驚いたものだった。番組ではなく広告が主役だったとは!
『利己的な遺伝子』のアイデアも「テレビ局の儲かる仕組み」も、「一見主役に見えるものが脇役であり、実は脇役に見えるものが主役である」という点で、両者は感覚的に似ている。感覚的に似ている以上でも、それ以下でもなく、ただ似ている、それだけ。
そして、「ネット関連企業の儲かる仕組み」。アンダーセン在籍時代に同僚と「どうしてヤフーって儲かるんだろうね」と雑談していた昔が懐かしい。しばしの沈黙を経て二人がたどり着いた答えは「そうか、広告収入か!」ヤフーとグーグルは検索エンジンの技術を向上させることに熾烈な競争を展開させるが、その目的は広告収入を高めるという、ただそれだけの目的のためである。
『利己的な遺伝子』のアイデアと「テレビ局の儲かる仕組み」は感覚的に似ている域を脱し得ないが、「テレビ局の儲かる仕組み」と「ネット関連企業の儲かる仕組み」は「似ている」のではなく、両者は「全く同じ」ではないか!なんで「同じ」ものの「融合」が、いまさら、神妙な面持ちで新聞紙面で論じられねばならないのか?
これに一つの解を与えるのがハーバード大学教授クリステンセン著の『イノベーションのジレンマ』である。彼の説に従えば、テレビ局がネットビジネスに乗り出さなかったのは、テレビ局の経営者が優秀だったからということになる。
ネットの黎明期を思い出せば、ネット広告市場はテレビ広告市場に比べて①はるかに市場が小さく②利益率も低かった。市場も小さく利益率も小さく、かつ不確実性も高いビジネスに乗り出す決断は、短期的にではあるが、確実に企業価値の毀損を招く。こんな馬鹿げた決断を下す経営者は無能である。クリステンセンに従えば、「TBSの経営陣は、ネットビジネスへの参入という経済的には馬鹿げた決断を下し得ないほど優秀であったため、今楽天に株式を取得されて悩む事態になっている」ということになる。
もちろん、上記はアイロニーである。TBSの経営陣が優秀だと思われる痕跡は、新聞紙面からは一つも見出せない。「甘いかもしれないが、お互いにある種の信頼関係があると思っている(10月14日日経新聞朝刊より引用)」こんな発言をする経営者を「優秀」とみなすようでは、私のコンサルタントとしての生命線が危うくなってしまう。彼等はアメリカで繰り返されているメディア関連の買収劇を十分に傍観できる時間的猶予を与えられていた。しかし、インターネット関連ビジネスへの布石を何も打たなかった。残念ながら、TBSが楽天に株式を取得されてオロオロしているのは、フツーに経営陣が無能であったからと断じざるを得ない。
ここで筆を止めるのが去年までの私であったが、今年から新しくはじめた「ある仕事」により、今の私の最大の関心事は、ビジネスの仕組ではなく、その中にいる「ヒト」となった。ホリエモン騒動のときは少しもホリエモンの肩を持つ気にはなれなかったが、今回は三木谷氏を応援したい。その理由は両者の人格のレベルの相違。人格的に未成熟なヒトが世間を震撼とさせるのを傍観するのは耐え難いが、優れた人物が夢を追うのは応援したい。あるいはフィルターを何枚も通して三木谷氏を見ているため、私の目が欺かれているのかもしれないが。これは私よりも年下の者に対するやっかみなどでないことは、昨日私が同じく私よりも年下の佐藤棋聖に対する賛辞を述べたことからご理解いただけると思う。
【ご連絡】
来週は都合により、当ブログそしてもう一方のブログの更新をお休みします。「どこへ行くのか」ですって?もしかしたら、川を渡ってきれいなお花畑の回りをウロウロしているのかもしれません。洒落にならんが(笑)。