執筆者のプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif

2005年10月15日

「ファンが株主になる」というパラドクス

本当は昨日で打ち止めにして、更新を一週間から10日間休もうと思っていたのですが、本日の新聞を読んでいたら、ムラムラしてきたので・・・(笑)

村上氏は、阪神タイガースを阪神電鉄からスピンオフさせて上場し、ファンが株主になればよいと言う。ファンが株主になるとどのようなことが起こるのであろうか?以下に考えられる点を書き連ねてみたい。

①株価が本質的な価値よりも割高になる。
ファンが株主である上場企業は、実は既に存在する。その名はライブドア。「ホリエモンファンだからライブドア株主」という人は少なくない。ライブドアの株価はMSCBの発行を受けて希薄化のインパクトを織り込む水準まで急降下したものの、その後の株価はほぼMSCB発行前の水準までに回復している。そして、これほどまでの水準に株価が回復する材料を私は聞いていない。ファンにとっては、「バリュエーション」などは意味を持たない。だってファンなのだから。それがファンというものなのだから。ライブドアという前例を見ると、ファンが株主になれば、本質的な価値以上に株が買い進まれることが予想される。

②大株主が少なくなり「モノ言う株主」の割合が低下し、ガバナンス機能が低下する。
商品の割引券を配布したり、プレミア商品を株主に提供することにより、個人投資家の増加を企業の大半の思惑は、実はこれだったりする。自社の商品の熱烈なファンを株主としてしまうことで、大株主からの圧力は緩和され、敵対的買収がアナウンスされても味方についてくれるかもしれない。その結果、株主による経営陣に対するチェック機能は著しく減退することが予想される。

③経営の非効率が温存される。
私は、実は全く野球を見ない人なので、空気を読んでない発言になってしまっているかもしれないが、もし巨人の株も上場されていて巨人ファンが株主となっていたならば、株主の声により清原が巨人から出ていくことはなかったのではないか?清原を「非効率」呼ばわりしては巨人ファンの反感を買ってしまうが、同様の非効率がファンの声によって温存されてしまう事態は覚悟せねばなるまい。
ここまで書いて②と③は自己矛盾しているように思われるかもしれない。しかし、こう考えていただければ整合性がとれているといえるだろう。「ファンである株主は数値上から経営陣にプレッシャーをかけることはないが、ファンゆえに『情』から経営陣にプレッシャーをかけることは大いに予測される。」

④ステークホルダー間の緊張関係が減退する。
「ファン」という言葉を「顧客」と置き換えて一般化するならば、思うに「顧客」というステークホルダーと「株主」というステークホルダーは、本来緊張関係にあるべきで、一体化してしまってはいけないのではないのかという気がする。「顧客」はできるだけ安い価格で商品を手に入れることを欲する。しかしこの欲求は、できるだけたくさんの配当が欲しい「株主」の利害と真っ向から対立する。両者の利害の調整を図るのが、マーケットメカニズムであり、経営陣の仕事でもある。本来ありうべきこうした緊張関係が消失してしまっては、「神の見えざる手」が機能しなくなってしまうのではないかとの危惧がされる。
こう書いている一方で、「ファンが株主」というユートピアもあり得るのではないか、という気も少々ある。ファンが株主であっても株式会社経営は成り立つのかどうか、阪神タイガースを舞台に実証研究がなされるのも面白いかもしれない。

こうして、一応常識を積み上げて考えていくと、ファンが株主になれば、ガバナンスの欠如や非効率の温存により企業業績は下向くが、株価は上昇し、結果割高となることが予測される。阪神タイガースをスピンオフすることで割安な阪神電鉄株が顕在化して、村上ファンドが利益を手にすることには異論をさしはさむつもりはない。しかし、熱狂的な阪神タイガースファンに株をつかませて、割高となる状況を作り出した上で売り抜けることを目論んでいるようであれば、それは見逃せまい。昨日報道ステーションではじめてナマ村上を見たが、あれは相当な狸だ。だまされてはいけない、阪神ファン!

ハァ、とすっきりしたところで、来週は更新をお休みいたします。

Posted by Ken Kodama at 2005年10月15日 15:01
Comments
Post a comment









Remember personal info?