執筆者のプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif

2005年11月16日

生保では増えて損保では減る、これなーに?

本日の日経新聞では、大手生保各社の自己資本増強の動きが報道された。以下に、NIKKEI NETの報道を一部引用しておこう。

(引用始)
『大手生命保険各社が相次ぎ自己資本の増強に動いている。第一生命は今年度以降内部留保の積み上げ額を増やし、3年程度で5000億円増の総額2兆円にする。三井生命は9月末に住友信託銀行から劣後ローンで約100億円を調達した。株価回復や解約減少で経営環境は改善しているが、攻めの経営に向け投資を増やすために財務基盤を一段と強化する。』
(引用終)

劣後ローンは厳密には自己資本ではないが、もちろん広義では自己資本と考えてよい。本日の日経紙面にも表が記載されているように、自己資本増強の動きは生命保険各社で見られている。
一方で、損保各社は自社株買いを積極的に行っている。例えば下記のような開示文書を参照されたい。

三井住友海上火災の自社株買いに関する開示文書
ミレアホールディングスの自社株買いに関する開示文書

あまりにも明白な基本的事実を確認しておくと、自己資本が多ければまさかのときに安心であり、少なければまさかのときに対応しきれず経営破綻の憂き目をみる確率が高くなる。で、これは定量的な分析等を経ていない、私の全く主観的な感覚にすぎないのだが、生保と損保と、どちらがより大きな「まさか」に直面しているかといえば、それは間違いなく損保であろう。「災害時帰宅マップ」なるものがコンビニで売られている時代である。また、アメリカのハリケーンも世界的な異常気象の一環としてとらえるならば、たとえ本日の紙面に記載されているように今年大きな台風による被害がなかったとしても、来年以降どうなるかは極めて不透明と言わざるを得ない。
こんな状況にも関わらず、なぜ損保は自社株買いにより自己資本を圧縮しているかといえば、それは損保各社が上場株式会社であり、株主からの圧力にさらされているからである。対して、生保の多くは相互会社という形態をとっており、契約者と大きく利害が対立する株主というステークホルダーが存在しないため、自己資本の積み増しが許されるのである。
これだけ書くと、保険業においては、なんだか相互会社という枠組みの方が優れているのではないかと思われてしまうが、保険各社は相互会社から株式会社に組織変更をしてきた経緯がある。その最大の狙いは①コーポレートガバナンスの強化②市場からの資金調達により経営基盤を安定させることにあったわけであるが、②については自社株買いという「マイナスの資金調達」を行っているのであるから、経営基盤の安定という当初の目的とは少々異なる方向に行っているといわざるを得ない。
保険というビジネスは、その「まさか」の大きさという点において、そしてその「まさか」が国民の生活の支えとリンクしているという点において、他の事業法人とは一線を画するといえる。そうしたビジネスを営む企業が、ROEというモノサシを杓子定規に使って、株主にアピールするのもどうかとも思う。しかし、とはいっても株式会社である以上、株主の権益は保護されねばなるまい。切れ味は悪いが、本日の結論は「利害調整が難しい」ということで・・・
なお、相互会社についてはWikipediaに分かりやすくまとめられているので、関心をもたれた方は是非ご一読されることをお勧めする。

相互会社 - Wikipedia

Posted by Ken Kodama at 2005年11月16日 10:36
Comments
Post a comment









Remember personal info?