私が東証をこのブログで取り上げるのは、一体何度目のことであろうか?もちろん、私が証券会社出身であり、自らの関心に近いネタであるという原因もあるが、それにしても近年の経済環境の急速な変化は、東証の果たすべき社会的役割を、とてつもなく重要なものにしてしまっている。システム問題しかり、そして本日の買収防衛策もしかり。
黄金株については、馴染みの薄い方のために、本日の日経金融新聞の定義を下記に引用しておこう。
(引用始)
『特定の株主に合併決議などの拒否権を与える株式。友好的な株主に割り当てておけば、敵対的企業買収者の提案を否決してもらえる。2006年施行の会社法では黄金株に譲渡制限がつけられるようになり、より防衛効果が高まる。導入には株主総会の特別決議が必要。』
(引用終)
上記を読めば一目瞭然であるが、黄金株は、敵対的買収から身を守りたい動機をもつ現経営陣の保身のために有利に働く。その裏で犠牲にされるのは、株主の利益であるから、今回の東証の英断は個人投資家よりの私としては、高く評価したい。もちろん財界とて、この基本方針に面と向かっては反対できないため、争点は「例外的な」適用をどこまで認めさせるかに絞られているが、東証にとっては直接的なお客様である財界からの反発が容易に予測される中で、このような断固たる方針を打ち出せたことは素晴らしい。
と、黄金株の件については、投資家保護を貫いた東証の姿勢を高く評価するが、一方で東証自らの上場問題についてはどうであろうか?東証が上場すれば、当然のことながら、自らも一上場企業として、利益の拡大に努めねばならない。ここで、東証が自主規制機能を内部に有したまま上場すれば、東証が自らの収益拡大のために、自主規制機能を甘くして、その結果、投資家保護が実現できなくなる恐れがある。この問題に対する東証の回答は、こちらの記事にもあるような、委員会等設置会社という、自主規制機能の分離独立との比較において、中途半端なものであった。
私が気にするのは、東証の一連の意思決定に欠如している一貫した理念である。黄金株の一律禁止を打ち出すほど腹が据わっているのであれば、自らの上場問題においても、投資家保護を貫いて欲しかった。これらの問題を総合して考えると、東証の意思決定のよりどころの優先順位は「①自らの組織としての保身>②投資家保護>③財界への配慮」といったところであろうか?
東証にもこちらのような企業理念は存在するようだ。しかし、この理念は組織内に浸透されているのであろうか?特に東証の経営陣は、この理念に立ち返って意思決定を行っているのであろうか?その社会的な役割の大きさを、今一度認識していただければ幸いである。