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2006年01月06日

人口減少社会と『学習しない組織』

2006年の年頭に日経新聞に連載された『人口減と生きる』というコラムは実に興味深かった。例えば、1月5日付の朝刊3ページには「社会資本の維持更新に必要な費用」と題された、象徴的な右肩上がりのグラフが描かれている。このグラフによれば、この費用は2000年から2050年にかけて4倍近くに膨れ上がる模様だ。その一方で、人口数の推移に関しては、多くの報道においてそれとは反対の右肩下がりのグラフが紹介されている。これらの費用を負担する将来の納税者も、そして道路の利用者も減少することが確実に分かっているのに、なおも作り続けられる道路、道路、道路・・・このあまりにも不整合な未来を主導的に描いているのは官僚である。しかし、友人に一人でも国家公務員がいるのであれば、彼等の優秀さを心底実感しているはずである。それでありながら、このあまりにも単純な数式を逸脱する未来像を描き続ける官僚達。
「国益より省益を優先しているから。」というのも、一つの説明であろう。「ひとりひとりの管理職のIQが120をこえても、集団ではIQ63になってしまうということがなぜおきるのか?(『最強組織の法則(徳間書店)』より引用)」このような問題をラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)という枠組みから説明しようとしたのが、ピーター・センゲである。つまり、日本の官庁には組織としての学習能力が緊急に必要とされているのではないか、というのが私が言いたいことである。
組織としてIQ120を出すラーニング・オーガニゼーションとして機能するには、以下の5つが不可欠であるとピーター・センゲは主張する。

①システム思考
②自己マスタリー
③メンタル・モデルの克服
④共有ビジョンの構築
⑤チーム学習

①の「システム思考」とは、要は対症療法に頼るのではなく、構造的に思考することにより真因に迫るような思考をしなさい、ということである。例えば出生率。こちらのasahi.comの記事によれば、あの衝撃的な右肩下がりの人口数のグラフですら、以下のような仮定のもとに作成されているようである。

(引用始)
『合計特殊出生率が07年に1.30台で底を打ち、長期的には1.39で安定するという前提を置いた。』
(引用終)

しかし、システム思考を行えば、この出生率は以下のような負のスパイラルに組み込まれていることは明らかであろう。

「出生率の減少 → 年金給付を賄うための消費税率・年金保険料率の上昇 → 将来への不安の増幅 → 出生率の更なる減少 → ・・・」

出生率が「長期的には1.39で安定する」等という希望的観測を捨てて、官僚達はこの現実を直視することからはじめていかねばならない。
そして、この負のスパイラルの最大の元凶である「将来への不安」を払拭するべく魅力的な共有ビジョンを政治主導で描かねばならず、そのビジョンを実現するべく、官僚達は省の垣根を越えて活発に意見交換を重ねることにより、チーム学習を進めていかねばならない。
(補足しておくと③のメンタルモデルの克服とは、我々の心の中に固定化されたイメージに囚われない思考をする必要があるということであり、②の自己マスタリーとは、「個人の視野をつねに明瞭にし、深めていくことを意味する。(引用)」)
政官が一体となって、ラーニング・オーガニゼーションを形成すれば、日本の未来も開けるてくる可能性がある。小泉首相は様々な功績を残したことは認めるものの、残念ながらこの大事な問題に関して彼のなしたことといえば、夢見心地の太っちょ担当相を据えたくらいである。ポスト小泉に必要とされているのは、正しく日本のビジョンなのである。(フォローしておくと、私は猪口教授に憧れて上智大学に入学した一人であり、上の表現はユーモアを交えたエールのつもりです。竹中大臣も当初は批判ばかりだったが、すごい仕事を成し遂げた。学者出身は大化けするかもしれない!!!)
最後にスティービー・ワンダーの"So What The Fuss"の歌詞を引用して。一貫して「官僚達よ恥を知れ(Shame on them!)というスタンスで書いてきたが、彼らを野放しにしてきた大元をたどれば、それは我々自身の無関心なのである。この問題は我々自身の無責任が招いた帰結なのだ(Shame on us!)と気付いたときに、日本は確実に変わり始めることであろう。

Posted by Ken Kodama at 2006年01月06日 17:39
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