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2006年01月10日

住宅ローン考

本日は久々にFPネタで。
正直なところ、私は時として日経新聞の特集記事の「質のバラツキ」具合に当惑してしまう。例えば本日付朝刊の11ページの『ねだんの力学』と題した特集。デジタル家電の価格形成のプロセスを究明しようとするこの特集は、優れた洞察を含んでおり興味深い。それに対して、3ページに掲載された『比較金融商品サービス』と題された特集は、これは記事の形態をとった広告なのかと疑いたくなるほど、極めて表層的な内容である。
同特集には二つの表が掲載されている。一つは「民間住宅ローンの利率」と題されたもので、これは当初3年間固定金利の一覧表である。もう一つは「住宅金融公庫の提携ローン」と題されたもので、こちらは20年から35年の固定金利のもの。表中で最も表面金利が低いものを比較すると、前者は0.78%、後者は2.67%であり、その差は約2%ポイント。多くの方は前者のタイプの広義の変動金利ローンの表面利率の低さにどうしても「魅せられて」(この表現を使うとどうしてもジュディ・オングのあの衣装を連想してしまうあたり30代後半の哀しいところです)しまう。
にも関わらず、私が住宅ローンの相談を受けた場合基本的にお勧めするのは、後者の固定金利ものである。なぜって、将来なにが起ころうと適用される利率が変わることなく、金利上昇リスクを完全に回避できるから。変動金利ローンの当初の表面利率の低さは、金利変動リスクを債務者が負う代償であると考えた方がよい。「今後2~30年の間に、どれほど金利が上昇しようと私はキチンと利息を支払います」というその肝っ玉に応じて、当初は低い利率がご褒美として与えられるのにすぎない。
もちろん、変動金利型が適した方というのも存在する。例えば、歩合給の割合が高いフローリッチな方。外資系証券のディーラーや歩合給が高いセールスマンの方は、成績次第では全くボーナスがもらえない年がある可能性もあるものの、自らの腕次第で早期に繰上返済を積極的に行い、金利上昇期を前に債務を完済できる可能性もある。そのような方には、リスク要因を説明した上で変動金利タイプのローンをお勧めすることもある。
と、ここまで私の手の内を明かしてしまっても、なお私が与えうる付加価値というのは繰上返済の目標額を組み込んだプランを作成することにある。繰上返済がいかに得であるのかは頭で分かっていても、それは貯金の取り崩しを意味するのであるから、実際には躊躇する方が多い。「これだけ貯蓄を取り崩しても生活には支障をきたさない」ということをワン・トゥ・ワン対応で数値化することにこそ、FPの真価が問われるのだと私は考えている。
少しセンセーショナルな表現をとれば、変動金利型のローンは偽装マンションと、以下の点で共通点がある。

①問題が短期的に発生する可能性は極めて低い
②問題の直接的な引き金は企業のコントロールの及ばない(金利情勢、地震)ものである。

くれぐれも断っておくが上記の二点のみに相似性が見られるというだけのことであり、偽装マンション同様の「悪意」があるなどと述べているのではない。偽装マンションには国が支援の手を差し伸べてくれたが、金利が急上昇してローンの返済が困難になったとしても、誰も救済などしてくれない。なぜなら、そうした事態も承知の上で変動金利のローンで借り入れたのだから。銀行のローン担当者が「異動」という極めて都合のよいシステムが存在せず、ローン完済まで債務者と顔を合わせる可能性が高いという場合、担当者は変動金利タイプのローンを勧めることができるであろうか?私には恐くてできない。
ここまで説明しても変動金利型のローンで借り入れたいという方は、それも一つの見識である。そのような方にアドバイスをしておくと、まず本日の日経新聞の「民間住宅ローンの利率」と題した利率の表は、表の下にも書いてあるように、期間限定のキャンペーン金利に過ぎないということ。これらの当初のキャンペーン金利のみに惑わされることなく、キャンペーン期間が明けた時点での利率の設定基準をつぶさにチェックしておく必要がある。また、悲観的なシナリオ(つまり将来急激な金利上昇が発生し得る)のもとでシミュレーションしてみること。金融機関が行ってくれるシミュレーションは、かなり楽観的であることが多い。悲観的なシナリオの数値を見ても、動揺することがなければ、その方はリスク許容度という点においては変動金利型のローンを借り入れる資質があるといえる。

Posted by Ken Kodama at 2006年01月10日 10:55
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