【1.こんなときだからホリエモンの功績を確認しておきたい】
株式分割もライブドアも当ブログにおいては、正直なところ「いまさら」感が否めないテーマである。捜査の行方がどうなるかは私には見当もつかないが、仮にクロと判定されようと、ホリエモンが日本にもたらした功績への評価は変わることはない。当ブログでは一度として行ったことのない「ホリエモン礼賛」だが、こういうときこそ、彼の「陽」の面を確認しておきたい。私は彼の功績は以下の3点にあると思う。
①自ら積極的に仕掛けた敵対的買収により、日本企業が『株主重視』を真剣に考えるにようになった。
②同じく敵対的買収が、会社法等の関連法整備を促した。
③『起業』にまつわる負のイメージの払拭に大きく貢献した。
今回の容疑にもM&Aがからんでいるが、「だから日本ではM&Aは全てダメ」という論調になってはいけない。問題の所在は、ロジカルに突き詰めねばならず、一をもって十を否定するようなことがあってはならない。
【2.株式分割の意図とはなにか?】
直接の容疑は偽計取引及び風説の流布だが、本日の日経新聞でも報じているように、それは株式分割と密接に結びついている。100分割、10000分割などと呼ばれる株式分割を実施した企業の意図はどこにあったのか、今一度整理しておきたい。
①売買単位を引き下げることにより『貧乏人』の需要を増加させる
お上品なファイナンスのテキストの類には、これが書いてある。急激な成長を遂げた企業の株価はやはり急激に上昇する。そうすると、例えば数百万円といった金額が最低の売買単位になってしまい、十分な資産を持たない人々にとっては「買いたくても買えない」高嶺の花になってしまう。したがって、これらの人々でも売買に参加できるようにすることにより株式への需要を増加させる効果を持つのが、株式分割なのである。
②株価の一時的な急上昇を演出し、上値への心理的な抵抗をなくす
株式分割には、ある奇妙な事務的な慣行がつきまとっていた。それは「株券の発行の事務手続きに要する期間が一ヶ月強あるために、分割で発行された新株はその間売却できない」というものだ。つまり、分割の決定後一ヶ月強の間は、①で説明した効果と相俟って圧倒的な「需要>>>>供給」の状態が創出され、一時的に株価は急上昇する。新興企業の過去の株価チャートにスティープな山が見られれば、過去に株式分割が実施されたことを疑うべきであろう。しかし、分割子株が株主にいきわたった時点でこの需給のアンバランスは崩れ、多くの場合株価は元の水準に戻される。しかし、投資家心理とは不思議なもので、一度バカ高い上値がつくと、それは「バカ高い」ものに過ぎないとは分かっていても、その後の株価の上昇に寛容になってしまう。こうした効果を狙って、一時的な株高を演出することが、株式分割の2つめの意図である。後述の③に比べれば「悪意」は少ないといえるが、とはいえ、一時的な高値が形成されるためには、その局面で「買い」に回ってくれるDQN投資家が必要となる。そうしたDQN投資家が損失を被ることを知っていながら分割を行うということは、やはり「悪意」に満ちているといわざるを得ない。
なお、この奇妙な事務的慣行については昨年ようやく是正され、我々は今後心配する必要はない。詳しくは、下記の過去エントリーを参照されたい。
③②における一時的な株高の局面で実際に利益を得ることを目的とする
これは②に比べてはるかに悪質である。このパターンは私の勝手な分類によれば、さらに(A)極悪と(B)小悪に分類される。まず、前者の(A)極悪は、分割子株が品薄の期間中に全く別の手段で売却のための株式を供給するというもの。How?そのために使われたのが、転換社債である。株式分割の分割子株発行はみんな仲良く1ヶ月強待ってもらうが、でも転換社債の転換請求がきたらすぐ株券を発行してあげる。なぜ、そういうことができるのかは私には分からない。だが、このパターンで「誰か」が巨利をあげたのがシーマである。シーマの株価チャートをご覧いただきたい。100分割を実施した2005年初頭に「異常」としか形容し得ないスティープな山が形成されているが、特徴的なのはその下の棒グラフから分かるように、取引量が少しも減少していないという点である。これは本来ならば品薄になる期間中に誰かが別の方法で株券を手にしていたということであり、実際シーマはその直前に転換社債を発行していた。
その点後者の(B)小悪は、一人で抜け駆けして「売り」に回ったりせず、あくまでもみんなも売れるときに売るという点で、前者に比べればの話だが「悪意」は小さい。渦中のライブドアマーケティングの株価チャートを見ると、山の下の取引量はごく少ないように見え、これだけから荒い推量をすれば、(B)の小悪のケースなのかもしれない。
④さらに急激な株価上昇を演出するために情報操作を行う。
これは、まあ「悪魔の誘い」とでも呼んでおこうか?これはいいのがれのできない、明白な違法行為である。ライブドアマーケティングのケースは、新聞報道を見る限りでは、「小悪」と「悪魔の誘い」のあわせ技であったといえよう。
【3.法とモラル】
法という面に即してみれば、前項の④は明確な違法行為であるが、②と③は完全な「シロ」である。③(A)の「極悪」にしたって、「極悪」というのは私の倫理的な価値観によるネーミングに過ぎず、法的には追及できないはずである。
私のようなごく普通の感覚を持つ人間から見た場合に、モラルの感覚と法のギャップには、ただ驚かされるばかりである。規制当局は、自らの良心に照らし合わせながら、迅速な対応をしていかねばならない。なぜ、それができなかったのかについての私の考察は、下記のエントリーを参照されたい。
現実的な問題として、法は常にモラルを後追いする。そのときに「違法でなければなんでも行う」という姿勢では、短期的な利益は手にし得ても、長期的な信用は勝ち取ることは困難となろう。したがって、各企業はコンプライアンス(法令遵守)の姿勢をさらにおしすすめ、アメリカ企業のように、Compliance & Ethicsととらえなおし、倫理的な観点からも自らの行動を律するべきであろう。(下記のエントリーを参照)
日本では置き去りにされてしまった"And Ethics"の視点
では、一従業員に過ぎないあなたが、自らの意思に反して、倫理的に問題のある行動を経営陣から強いられたときはどうすればよいのか?そのようなときもシニカルになる必要はなく、道はあるのだ、という趣旨で書かれたのが下記のエントリーである。
Posted by Ken Kodama at 2006年01月17日 09:23>なら様
お元気でしたか?以前のmixi日記の『価値のない涙』のタイトルは良かったですね~(笑)。
また、大変貴重なサイトをご紹介いただきありがとうございました。実際、株式分割が株主にとってメリットがあると誤解している方は多く(あのベストセラーの内藤忍氏の著作ですらも!!)、そのような方には、このサイトの『2 株式の分割は成長の証であり、配当が増えるのではないかという幻想』という項を是非読んでいただきたいですね!
しかし、このブログもライブドア。少なくとも言論の自由に対する姿勢は見上げたものです!!
ならです。
会社法の立案担当者の方のブログです。参考になればと思いURLを貼りました。もし既に御存じでしたら御容赦下さい。
http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50494974.html
Posted by: nara at 2006年01月18日 01:31