まだ忙しさの山場は越えていないものの、4月に入って少しずつ時間ができるはず。で、今日はリハビリ的なエントリーで。
私が子供の頃から不思議に思っていた疑問の一つが、「なぜクラシックはクラシックなのか?」ということ。言い換えれば、シンフォニーというのは21世紀の現代においても、定番として聞き継がれるのはベートーベンやマーラーだったりする。でも20世紀にそれを凌ぐほどの名曲シンフォニーが誕生してもよかったはずなのに、1曲として生まれることはなかった。なぜ、シンフォニーやあるいはピアノソナタでもバイオリン協奏曲でもよいのだが、これらの音楽は早い段階で進歩を止めてしまったのか、ということ。
これに対して私が抱いていた仮説というのは、「音楽というのは12音階の並べ替えによって生まれるにすぎないのだから、もうシンフォニーやソナタという形式内においては、パターンが網羅しつくされてしまったのだ」といったもの。しかし、この仮説には釈然としない部分が大きかった。なぜなら、私の学生時代はナツカシの「イカテン(若くて知らない方はゴメンナサイ)」全盛期であり、私自身もバンドで作曲活動とかをしていたから。確かにベートーベンのクロイツェルソナタを上回る名曲なんて書けるわけはないが、「春」を超えるくらいのレベルのなら書けるんでない?みたいな・・・ま、これは若気の至りに過ぎんのですが・・・
そして、最近のアメリカにおける「ポピュラーミュージックの死」の状況。ラップの砂嵐により、あの80'sでの豊穣なポピュラーミュージック文化は一挙に荒廃してしまった。「サンプリング・ミュージック」を殊更崇め奉っている人々もいるようだが、私は、サンプリング・カルチャーは創造性の貧困による産物に過ぎないと決めつけている。アメリカン80'sは、正しく音楽界のバージェス頁岩である。グールドが『ワンダフルライフ』で紹介したような、奇妙奇天烈なオパビニアのような個性的な楽曲が、80年代には様々誕生した。例えばトーマス・ドルビーの"She Blinded Me With Science"なんて、正しくオパビニアって感じ(笑)。でも、そうした目まぐるしいまでの進化の末に残されたのは、ラップ砂漠とトランスとサンプリングの不毛の砂漠・・・
これもやっぱり「12音階のパターンが一通り終わってしまった」のかと思っていたのだが、最近電車に乗ってぼーっとしているときに、はたと気がついた。「これは12音階のパターンが埋め尽くされたからではない。時代が変わったから音楽も変わったのだ。」ということに。
ビジネス本は盛んに現在は「インフォメーション・エイジ」であると喧伝している。で、インフォメーション・エイジが実現したのが、マスマーケティングの終焉である。マスマーケティングが古臭い手法となってしまった21世紀において、ビルボードNO.1を目指すような誰にでも好かれる楽曲を作ろうとすることは、いわば逆説的でもある。インフォメーションエージがもたらしたワン・トゥ・ワン・マーケティングがアメリカのポピュラーミュージックに引導を渡したと考えるのは、それほど的を外していない仮説だと思う。
日本のポピュラーミュージックシーンを見ると、まだポピュラーミュージックシーンは死んでいない。というか、まだバージェス頁岩の真っ只中といった感じがする。デフ・テック、ケツメイシ、MIMMI、元ちとせ・・・なんたるオリジナリティー。なんたる多様性。そして、なんたる心地よさ。
では、なぜ日本ではまだポピュラーミュージックに対して死が宣告されていないかといえば、マスカルチャーが完全には死に絶えていないからだろう。確かに紅白の視聴率は50%を割った。でも、午後9時代のOLの脳みそを溶かすドラマの類はいずれも20%近くの視聴率を維持している。そして、翌日のOLの昼休みの会話はドラマの感想からスタートする。現に、売れている歌はドラマとのタイアップがほとんどである。
ワン・トゥ・ワン・マーケティング時代の音楽はやはりワン・トゥ・ワンが主流になるであろう。エリカ・バドゥやノラ・ジョーンズ。特にノラは確かに私も好きだが、何百万枚も売れるはずの音楽ではない。売れたのは時代の変化を予兆したからである。これらに共通するのは土臭さ、人間臭さ。単にピコピコ打ち込み音楽に対する反動かと思っていたが、根はもっと深いところにある気がする。エリカもノラもライブできいてこそ、真髄が分かる音楽である。ライブで聴かれることを主眼においた音楽がこれからは主流に立ち、そして実際にCD販売からライブへと音楽業界の収入の源泉もシフトしていくことだろう。
・・・てなことを、突然閃いたので書いてみました。最近「書きづめ」の毎日ですが、こういう「書く」は別腹ですね(笑)。気分がスッとしました。
>nara様
書き込みありがとうございました。また、レスが遅れ失礼しました。
そういえばお兄様は音楽家なのですね!
音楽家の方であれば、私のクラシックに対する疑問は解決済の古い問題なのかもしれませんね。お兄様の見解は非常に興味はありますが、一素人の疑問にすぎないので、くれぐれもお仕事のお邪魔にならぬよう!
今度、兄に音楽家としての意見を聞いてみます。