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2006年04月29日

『デリバティブ商法』は三井住友銀行だけのものではない

中小企業に対する金利スワップの押し付け販売が原因で、三井住友銀行は『一部業務を半年停止』という事態にまで追い込まれてしまった。

(4月28日の日経新聞朝刊より引用始)
『営業現場では、担当者が上司とともに顧客を訪問し、「金利スワップの購入が融資の条件」と強くにじませた例もある。』
(引用終)

こうした記述を読むと、独占禁止法違反で業務停止に追い込まれるのはやむをえない気がする。
金融に疎い方のために若干解説しておくと、変動金利のローンに金利スワップを組み合わせて、固定金利のローンに変換するアイデア自体は全く問題はない。というより、中小企業の金利リスクを減じるという観点から、素晴らしい提案である。しかし、それは変動金利のローンを貸し付けた銀行と、金利スワップを提案した銀行が別であった場合に限って、「素晴らしい!」という賛辞がもたらされるのである。
変動金利建てのローンと金利スワップを抱き合わせで販売する・・・変動金利建てのローン自体も中小企業向けの高めの(信用)リスクプレミアムが上乗せされていると考えられるし、金利スワップ自体も中小企業向けに対しては、高めの手数料が課されているはずである。(この辺りは厳密な数値での実証をする暇がないので、推察に基づく議論であることをご承知を)ということは、この「デリバティブ商法」に屈した中小企業は、ダブルに暴利をむさぼられているということになる。本当に融資先のことを考えるのであれば、固定金利建てのローンで貸し付けを1本実行すれば済む話ではないか!奥頭取は「顧客第一という経営理念を再確認する(引用)」とコメントしているが、頭取の認識通り、三井住友銀行に欠けていたのは、顧客重視の姿勢である。
こうした社風が三井住友銀行内に形成されてしまった背景をたどると、やはり大企業向けのビジネスに旨味がなくなってきたからに他ならない。デリバティブの教科書の冒頭に必ず登場する、歴史的なIBMと世銀の通貨スワップでは、間に仲介した金融機関(ソロモンだっけ?)は、べらぼうなベーシスを懐に収めたそうであるが、現代では大企業向けの金利スワップは「コモディティ」に成り下がり、十分な手数料を確保することができない。そんな中で、交渉能力や知識を十分に持たない中小企業が「収益源」として標的にされたのである。
読者のみなさんが中小企業経営者でなかったとしても、この話は他人事ではない。個人も同様な理由から、金融機関の標的にされているのである。例えば、変なタイトルで恐縮だが、過去に書いた下記のエントリーでは、「銀行が満期を決めるタイプの定期預金」についてご紹介した。

俺の話を聞け~♪

一般的な定期預金に比べれば、随分と表面的な利率が高いことで人気を博している同タイプの預金だが、こうした預金を支えているのがやはり「デリバティブ」なのである。この場合はスワップではなく、オプションが使われている。
このタイプの定期預金を購入すると、必然的に銀行に対してオプションを売ることとなる。そのオプションを売ったプレミアム分だけ定期預金の表面金利が高くなるのだが、得られたプレミアム分だけ丸々金利が高くならず、かなりの手数料が抜かれているはずである。(これも実証していないため、推察に基づいた議論であることをご承知下さい)そりゃ~、プレーンな定期預金に比べたら金利が高くなるのは当たり前だけど、オプションを売って背負うことになるリスクに比べたら、その金利はまだまだ足りないのである。
しかし、こうしたタイプの預金は法律を犯しているわけでは決してない。が、これは私の主観的な意見だが、顧客重視の姿勢があるとは少しも思えない。個人客のマネーリテラシーの薄さと心理的な錯覚につけこんだビジネスであり、「良心的」という言葉からは程遠いといえよう。ただ、それだけのことであり法的に問題はなく、あとは個人がそうした商品から身を守るためにいかに賢くなるかが重要となるのだ。

Posted by Ken Kodama at 2006年04月29日 14:13
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